マスコミと官房機密費・・・週刊大阪日日新聞より

さきに紹介した週刊大阪日日新聞ですが、六月十九日にはこんな記事も出て
いたのですね。


こういう小さなところが、いまはがんばっています。
同じく、大手紙政治部記者の告白です。



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http://www.pressnet.co.jp/osaka/kiji/100619_01.shtml
マスコミに流れていた官房機密費


 官房機密費の一部が政治評論家やマスコミ関係者に配られていた実態が暴露
された。内閣官房長官をやり、自民党の最大派閥「経世会」の大幹部だった野
中広務氏の証言だけに信ぴょう性が高く、週刊誌や一部マスコミなど大手メデ
ィア以外では、この問題を厳しく追及している。政治のカネがいかにしてマス
コミに配られていたのか、そのことが公平・中立を掲げる報道をどうゆがめて
いたのか。現在の政界内部の事情に詳しく、元大手紙政治部キャップも務めた
霞泰介氏にインタビューし、癒着の実像に迫った。



元大手紙政治部キャップが告白


−大手メディアを除き、官房機密費による
マスコミ汚染が指摘されている。大手紙の政治部キャップを務めたあなたに
真相を聞きたい。


 野中広務内閣官房長官の発言はショッキングだった。
過去にも共産党加藤紘一官房長官時代(宮沢内閣)の機密費の一部を暴露
したことはあったが、今回は小渕内閣時代のもので比較的新しい。しかも発言
者が自民党の大物幹部だっただけに信ぴょう性が高いと受け止められた。


 一部の週刊誌などで名前があがった政治評論家だけでなく、大手紙やテレビ
局の政治記者を経験した者らがカネを受け取ったのはほぼ間違いない。
実際、元毎日新聞政治部長で政治評論家の三宅久之氏が、中曽根内閣時に受
け取ったことを認めている。
当然、現役の政治記者も含まれているのは過去の慣習から考えると疑う余地は
ない。


 というのも、昔から総理大臣を囲む政治部長論説委員らとの懇談会が行わ
れており、このときに「お車代」などの名目で謝礼を受け取るのは普通のこと
だった。


 だが、こうした事実が明るみに出ると、建前でも公正、中立の報道を掲げる
立場からすると、政権との癒着が国民の目に映るのはまずい。いわば身内の恥
を隠したい思惑がある。



−政治家がマスコミに対して官房機密費をばらまく狙いは何か。


 政権与党のシンパになってもらい、不利な報道を抑えることが第一の目的。
言ってみれば、マスコミをポチとして飼いならすエサの役割を果たしている。



−あなた自身、政治家に誘われて会食したことはあるか。また、そのときの
支払いは。


 政治記者にとって、政治家(主に大臣、派閥の長か大幹部)にいかに食い込
み、特ダネを得るかが日頃の取材上の最大の目標。その手段として政治家との
食事は格好の機会となる。こちらが誘い、安い居酒屋の離れで合うような場合
は、記者の方でカネを出すが、ほとんどは政治家がセットしてくれた高級な料
理屋やレストランで合うことが多い。支払いは政治家持ちで、記者はそのお礼
に、誕生日にネクタイを贈るなどして、ささやかにバランスを取る。だが、大
半は相撲界と同様、〝ごっつあん体質〟がまかり通っている。




報道汚染による世論誘導はあったのか?
官房機密費による癒着の実像!!


政治家とマスコミのなれ合い体質 


元大手紙政治部キャップの霞泰介氏へのインタビューを通じ、官房機密費による
政治家とマスコミ(政治部記者)の癒着の実像が次第に浮かび上がってきた。
こうした「なれ合い体質」から、報道の真相をねじ曲げ、世論形成を図った事
実もあったのだろうか? いよいよ核心に迫りたい。



−過去、マスコミが機密費のばらまきを背景に、
政治家に都合の良い報道をして、世論誘導を図ったことはあるか?


 世論の動向で政治が大きく動くような場合、過去でいえば、日米安保条約
改定問題や、消費税の導入問題が起きた際、政権与党に都合の良い論調を作
り出すよう働き掛けがあった。


 例えば、中曽根内閣で当初は「売上税」の名前で「一般消費税」を導入し
ようとした際、中小の商店をはじめ、経済界の猛反対に遭った。
このとき、導入反対の論陣の急先鋒(せんぽう)だった在京大手紙は、ある
時期から、突然、賛成に回っている。


 背景には、実力者である大幹部に陰に陽に政権与党側からの働き掛けが
あったからだ。方針転換の見返りとして、民間や公共の広告量を大幅に増
やすなど、官房機密費を使った便宜供与の形跡があった。



−かつては政治記者が政治家を交えて公然と賭け麻雀が行われていたと
聞いたが。


 世代の変化で今の若者はTVゲーム専門で、麻雀には見向きもしな
くなり、10年前までは見慣れた風景だった記者クラブでの賭け麻雀
はすっかり姿を消している。わたしが知る全盛期のころは、何と国会
内の記者クラブでも朝のうちから公然と行われており、しかも、その
場に与野党の議員が加わるのも日常茶飯事だった。


 というのも、政治の取材には待ち時間がつきもので、記者は暇な時間
を利用して、読書したり、花札に興じたりして、主にベテラン記者が麻
雀卓を囲むという具合だった。もちろん、金を賭けて。


 賭け麻雀に加わるのは主に国会対策に関係する議員が多く、記者との
懇親を深める狙いがあったが、気前よく負けて小遣いをばらまく議員の
評価は高かった。長年の習慣として続いており、とがめ立てする空気は
一切なく、言ってみれば、仲間うちだけで構成する記者クラブ制度の閉
鎖性を象徴するヒトコマといえる。



−野中氏はなぜ、暴露したのか。


 野中氏は、かつての最大派閥「経世会」(竹下派)の大幹部。民主党
小沢一郎氏とは政敵同士だった。


 すでに政界を引退したが、民主政権後の小沢氏は、野中氏がトップを務め
土地改良事業団体連合会の予算削減や、自民党から出馬予定の参院選候補
を辞退に追い込むなど徹底的に弱体化を図ってきた。当然、面白いわけがない。


 民主政権になって、官房機密費の扱いが話題になり、政権獲得前の「原則・
公開」から後退していることを見て取った野中氏は、あえて過去の事例を暴露
することで国民の目を引きつけ、民主党へのけん制を狙ったと考えられる。


 年間14億円を超える官房機密費に領収書は必要なく、使途も非公開で済む。
このため、政権を維持するための与党の裏金として使われてきた歴史がある。
そのうまみを知りつくしているだけに、野中氏が投じた一石は計算されたものと
見ていい。



−大手マスコミによる小沢批判が始まったのは平成9年、竹下派直系の情報
機関「三宝会」が設立してからだと指摘する声があるが本当か。


 確かに三宝会には経世会竹下派)を担当していた政治部記者が多数参加
していた。もちろん彼らは竹下シンパであり、血みどろの戦いをして派閥から
別れた小沢氏は、竹下氏にとっては仇敵で、記者たちにとっても敵だった。
仲間の記者から小沢氏の動向に関する情報を集め、竹下派の幹部に流すのは
日常茶飯事のことであり、大手マスコミによる小沢批判報道の口火を切った
一面があったのは否定できない。


 小沢氏を恐れたのは、細川連立政権を仕掛けたように、小沢氏の持つ豪腕
といえる政治力。その背景にある資金力も無視できない。そうなると、反小沢
の情報の中心は、どうしても政治とカネをめぐるスキャンダルとなり、それは
今も続いている。


 派閥記者の中でも、竹下派担当の記者は、その前身である田中派以来の伝統
もあり、政治家との癒着が目立った。盆暮れの付け届けを平気で受け取り、バー
やクラブの遊興費を派閥に付け回しする豪の者もいたほどだ。


 政治家のカネをめぐるスキャンダルを鬼の首をとったように報道する資格が、
果たしてマスコミ自身にあるのかと指摘されても仕方がない側面がある。



この特集の意図 


経済・財政政策や金融問題が最も急がれるはずなのに、いまだ「政治とカネ」
や「郵政民営化」が現在の政治の主な議題となっている。多くの人は「大手
マスコミはこの話題ばかりを取り上げないでほしい」と至って冷静だ。


 この手の話は分かりやすいので、政治を知らない人にとって選挙の判断
材料になりやすい。だが、偏狭な正義感で延々と議論していると大局を見失う。


 かつては政治家やマスコミにかかわらず「話し合い」という「談合」、
「コミュニケーションツール」という「カネ」が正々堂々とまかり通って
いた事実があり、またそれは必要悪でもあった。
だから今回、あえてかつての「政治とカネ」の真実を掲載した。
このことをぜひ、クールに読み抜いてほしい。




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官房機密費とは?


正式には内閣官房報償費と言い、「内政、外交といった国の事務や事業を
円滑かつ効果的に遂行するため、その都度の判断で機動的に使用する経費」
と定義づけられている。取り扱いは内閣官房長官の裁量に委ねられており、
領収書が不要で、使途は一切明らかにされず、会計検査院のチェックも形
式的で、その実態はベールに包まれている。国会対策の潤滑油とも呼ばれ、
野党を懐柔するための費用として使われることも多かったという。