2008-09-01から1ヶ月間の記事一覧

若桑みどり著『クアトロ・ラガッツィ 天正少年使節と世界帝国』上・下 集英社文庫 2008.3

この書は、厖大な史料を駆使した学問の書である。 イタリア・ルネサンス時代を中心とする西洋美術史を専門とし、ヴァチカンの図書館で古文書を渉猟することのできる語学力をもつ著者が、そこに豊富に残された天正少年使節の史料を読み込んだものというだけで…

NHK困るセンター

友人である内野光子さんのプログを、ときどき覗きます。内野さんは知る人ぞ知る硬派の歌人・短歌評論家で、『天皇制と短歌』など、切りこみにくいテーマを丹念に資料で追求する仕事をなさっています。プログは、そんな短歌評論や関わっている地域の問題が中…

国に棄てられた兵士たち・・・奥村和一・酒井誠著『わたしは『蟻の兵隊』だった』岩波ジュニア文庫

この夏(注・2006年)、東京では、七月末に封切られたドキュメンタリー映画『蟻の兵隊』がしずかなロングランを続けている。中国山西省残留問題に関わる裁判で、最高裁に上告した最後の控訴人五人のうちの一人、今年八十二歳になる元残留兵奥村和一さんを追…

戦争の愉楽・・・井上俊夫著『初めて人を殺す 老日本兵の戦争論』(岩波文庫)

戦争の悲惨さについては、しばしば聞かされてきた。わたしたちは映像や活字やさまざまなかたちで見、聞き、このような戦争を再び繰り返してはならないと知っている。だが、これらはすべて、被害者の視点からする反戦平和の弁ではなかったか。 戦争には、じつ…