街上遊歩

(2) うたごころ

暑い。秋口に入ってようやく夏らしい今年の暑さだが、湿度がとれない。むっとした生ぬるい風が路上をたちのぼる。 子どものころの、夏の朝の気持ちよさといったらなかった。どういうわけか、いつもに似ず、誰よりも早く目が覚める。寝ていてもいいのに、起き…

(1) 奇妙なレッスン

わたしの棲んでいる窓のすぐ外には、遊歩道が通っている。蛇崩(じゃくずれ)川という、蛇の出てきそうな街川が流れていたのだそうで、それをコンクリートで覆って暗渠にし、植え込みをして、人々の散歩道にしたのである。ここに棲みついてから、もう十年を越…