普天間問題・・・「海兵隊抑止力論を肯定する小川和久の暴論 - 米国美化の言論姿勢」・・ブログ「世に倦む日々」

今日は、鳩山首相が沖縄へ、日米合意の概要について説明しに行く
日だということです。これでは、自民党政治と変わらない。この米
国の意向を内閣で支えたのが、平野官房長官・岡田外務大臣・北澤
防衛大臣などです。鳩山首相の孤立は、早くからtwitterなどで伝え
られていました。しかし、任命責任があります。鳩山首相の意志とは
ことごとく裏腹になっているようですが、見通しが甘かったというべ
きなのでしょうか。ブログ「世に倦む日々」では、つぎのような明
晰な記事が掲載されています。この筆者は、元新聞記者だったと思
われます。

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普天間の情勢は、一日単位、半日単位で変わる。目まぐるしく攻防の
戦局が変わるのは、要するに鳩山由紀夫の腰が定まらず、両側から押
されて右往左往しているからだ。米国と官僚とマスコミはさぞかし苛
立っているだろう。一日前、5/21の午前中は、辺野古移設が明記され
た日米共同声明の発表が5/28で決定と報道で既成事実化され、それを
政府決定する閣議開催(=社民党の政権追放)が固まっていた。
ところが、福島瑞穂が官邸で鳩山由紀夫に詰め寄り、立ち話ながら抗
議に及んだ結果、鳩山由紀夫が揺れ始め、夕刻のマスコミ報道では共
同声明での辺野古明記が微妙な状態になった。さらに、業を煮やした
仲井真弘多が記者会見で辺野古移設の拒否を明言、5/23の鳩山由紀夫
の沖縄再訪時に卓袱台をひっくり返すと発言した。夜のテレビ報道で
は、共同声明を詰めている実務者(官僚)の声として、5/31に合意文
書を発表できるかどうか微妙だという弱気な情報にまで変わった。
半日で政府側が一気に押し返された。お手柄は福島瑞穂である。ブレ
ずに強気でよく押しまくった。福島瑞穂の強硬姿勢が、小沢一郎
亀井静香の「辺野古移設に対する消極的反対」の姿勢を媒介している。
今週の福島瑞穂はよく奮闘した。マスコミは、孤立した少数異端の社
民党が政権内でゴネでいるように演出して報道する。
だが、実際は違う。5月末に強引に辺野古決着で押し通そうとする
米国と官僚と閣僚の側に無理があるのだ。  


昨日(5/21)のテレビ報道では、亀井静香が、月末の日米共同声明
では移設先の具体名を出さずに先送りしろと提言している。この姿
勢は一歩踏み込んだものだ。これは、米国の要求に応じるなという
意味で、社民党寄りに歩調を合わせた。
鳩山政権と日本政府の普天間政策というのは、実際には何の中身も
指針もなく、ただ米国から発せられる要求に対して、官僚が頷き、
閣僚が頷き、頷いた内容がそのままマスコミ記者に伝えられ、リー
ク報道されているだけである。つまり、米国の要求がそのままスル
ーで日本政府の普天間政策である。1月以降、表面上は「ゼロベー
ス」と言われ、4月以降は「腹案」という表現でゴマカされてきた。
そして、「ゼロベース」と「腹案」の間に、勝連沖埋め立て案と辺
野古陸上案が交渉され、辺野古桟橋杭打ち案と徳之島一部移転案が
交渉され、どれもこれも米国から拒否されて、結局、12月以前の
現行案の振り出しに戻ったのである。米国は最初から5月末合意は
現行案で決める予定であり、当初の方針を1ミリも動かしていない。
オバマは、4月に鳩山由紀夫に対して、「きちんと責任が取れるん
だろうな」と恫喝したが、その意味は、5月末で現行案で決める約
束を守ってくれるんだろうなという真相になる。米国との合意は現
行案でしかできず、無論、その案では沖縄(仲井真弘多)との合意
はできない。鳩山由紀夫普天間の政治は、迷走を続けた挙げ句に

破産した。米国の妥協なしに沖縄が折れる案は出せない。
米国は、普天間問題を鳩山政権との間で動かす意思がないのだ。米国
の現行案への異常な執着は、「鳩山とは合意しない」という外交姿勢
の表明であり、すなわち、アフガン戦争が続いている間は、アジアで
米軍の戦略や方針に対して他国の干渉をさせず、一切の譲歩には応じ
ないという態度なのだろう。中間選挙を控えて、米国民が揶揄と侮蔑
の対象にしている日本に妥協することは、オバマ政権の支持率にも悪
影響を及ぼす。米国にとって日米関係とは、米国の奴隷になって盲従
し、カネを貢ぎ続ける日本という関係しかない。鳩山由紀夫の「対等
な日米関係」とか、「東アジア共同体構想」の政策標語も、少なから
ず米国政府を刺激したことだろう。米国は、安保外交政策の転換を伴
う日本の政権交代を認めないのであり、煎じ詰めて言えば、日本にお
ける政権交代を容認しないのである。政治学的に厳密に考えれば、日
本の真の政権交代は米国からの独立を意味する。対米従属からの脱却
を実現し、日米関係を根本から転換させられない政権交代は、単に自
民党の総裁が継起している時代の政権交代と同じでしかない。その観
点から見ると、日本の石油エネルギー供給をメジャー依存から離脱さ
せようとして、東南アジア方向に活路を求め、そのため米国の陰謀で
政権を追われたとされる田中角栄は、鳩山由紀夫の挫折の先例あるい
は嚆矢と言えるのかもしれない。米国にとっては、5月末の共同声明
を潰せば、面倒な徳之島への一部移転を約束せずに済む。


米国側にとって、新しい合意を見送るということは、日米間では古い
合意(06年のロードマップ)が残り、その拘束力を主張できる立場
を続けられることを意味する。国益上の不利は何もない。ロードマッ
プ合意での現行案を要求し続けるだけで、辺野古沖滑走路の建設工事
をせっつくだけだ。ポスト鳩山の次の政権に対して、その履行を威圧
的に捻じ込めばよく、履行しないのなら、危険な普天間基地を使い続
けると通告するだけだ。普天間で何が起きても、ヘリが民家に墜落炎
上しても、それは代替基地建設を急がなかった日本政府に責任がある
と、そう開き直れる。さて、昨夜(5/21)の報道ステーションでは、
普天間の特集の場面で小川和久が登場した。軍事専門家として、鳩山
由紀夫に普天間問題で助言を与え続けてきた人物である。その発言に
大いに注目したが、飛び出した解決策は、キャンプハンセンの中に移
設せよというもので、要するに県内移設の結論だった。小川和久に対
する私の認識と評価は、今回の一言で大いに変り、失望させられた。
沖縄でこれだけ反対運動が盛り上がり、国外移設への気運が高まって
いる時期に、政権の安保政策に影響を与える顧問格の知識人が、県内
移設の具体案を言うようでは話にならない。何のために、野党(民主
党)の安保政策のフェローを何十年もやってきたのだ。これでは、森
本敏と何も変わらないではないか。自民党時代の安保政策と同じだ。
「国外、少なくとも県外」を具体策に落とし込むのが、専門家たる小
川和久の役割であるはずなのに。


落胆させられた。小川和久の説明では、そのキャンプ・ハンセン移設
案の場合も、やはり離発着時にヘリが民家上空を飛び、周辺住民への
危険は確実に残るのだと言う。普天間に比べれば危険性の除去は大き
いが、辺野古と比べた場合は危険度は大差ないと、そういう意味のこ
とを正直に言っていた。キャンプ・ハンセン移設案は、米軍内部の論
理に立った上での普天間移設の候補地案であって、決して沖縄県民の
論理や要望に即した提案ではない。これは沖縄への新基地建設であり
、沖縄の基地負担の増大である。下地幹郎辺野古陸上案と変わらず、
県内移設を拒否する沖縄県民を無視した政策の立案と言える。そんな
提案をワシントンで国防総省の高官と協議していたらしく、小川和久
は自信満々だったが、全く無意味としか言いようがない。政治音痴も
甚だしく、単なる軍事オタクの蘊蓄議論の一つにしかならない。要職
にありながら、何を考えているのだろう。それ以上に、番組で見逃せ
なかったのは、小川和久が沖縄の海兵隊を抑止力として正当化してい
た論点だ。移設論では政治的な観点や認識を全く欠落させた軍事オタ
クの珍論を示しながら、海兵隊抑止論については、専門家の皮を被っ
てきわめて悪質な政治屋の立ち回りをしている。鳩山政権と米国の立
場を合理化している。こうなると、小川和久を軍事専門家として認め
ることはできない。小川和久によれば、沖縄の海兵隊は抑止力であり、
その意味は、北朝鮮が侵略行為に出るときに一撃を与える抑止力と、
台湾有事の際に半日で台湾に上陸できる抑止力の二つだと言う。


専門家を標榜する小川和久の、かかる荒唐無稽な抑止力論には、さす
がに呆然とさせられる。台湾に半日で上陸できるから抑止力だとは、
果たしてどういう意味の定義なのか。


(略)


まして、米軍の地上部隊と中国の地上部隊が激突するなど、そのよ
うな想定は絶対にあり得ない。それは米中戦争ではないか。米国は
そのような戦争を想定していない。沖縄の海兵隊が中国軍にとって
の抑止力などと、まるで毛沢東の頃のような冷戦時代の思考の遺物
に他ならない。笑止な愚論。


海兵隊の抑止論の論争については、言論戦として、ほとんど決着し
たと言ってよい状況にある。


(略)


もう一つ、小川和久の言説で見逃せないのは、米国は常に合理的な
軍事計画を立て、理性的に判断し、論理的に行動し、住民との合意
を重視するのだとする仮象(虚構)の宣伝姿勢である。多くの本土
の日本人が、「民主信者」の左翼側も含めて、この言説に騙され幻
惑されている。沖縄の住民を虫ケラのように轢き殺して逃げ、少女
を強姦し、人権蹂躙の苦痛と被害を与えている米兵の実態について、
それを個別的で偶然的なものとして捉え、それが米軍の本性である
真実を見ない。小川和久に聴きたいが、米軍が住民との合意を尊重
すると言うのなら、なぜ、米軍は沖縄県民が拒絶する辺野古に滑走
路を造れと無理を迫るのか。そもそも、この普天間移設において、
米国側の前提条件は「地元との合意」であって、それを理由にして、
徳之島移転も受け入れなかったのではなかったのか。徳之島につい
ては住民の反対を理由にして移設を拒否しながら、なぜ、沖縄につ
いては住民が反対しているのに移設を強引に進めてくるのか。
その矛盾をどう説明するのか。小川和久は説明できるのか。


普天間問題に関するかぎり、小川和久は軍事評論家ではなく、朝日の
船橋洋一と同じく米国のイヌでしかない。

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