管首相の消費税増税政策のブレーン小野善康と神野直彦

小野義康氏と神野直彦氏について、「世に倦む日日」氏が書いています。
http://critic6.blog63.fc2.com/blog-entry-327.html
「消費税増税のイデオローグの論理と心理」


まず、小野氏の重要発言について。
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小野善康が明確に「来年にも消費税を引き上げるべき」と主張している
証拠を発見した。6/11の産経新聞とのインタビュー内容を踏み越え、一気
に早期増税を明言している。これは、6/21に発表されたロイターとのイン
タビューで発言したもので、記者の質問に対してこう答えている。


「消費税は来年からすぐにでも上げたほうがいい。数字については示せ
ないが、失業率を3%に引き下げるまで人を雇えるお金が必要で、そう
であればかなりの増税が必要となる。私は消費税が特にいいと言ってい
るのではない。本来なら所得税を引き上げ、特に最高税率を上げて累進
性を高めればいい。高所得者はお金を使わないからだ」。


本来なら所得税の累進税率を高めた方がいいと言いつつ、所得税の方を
先にやれとは言わず、消費税の方を急いで上げろと言っている。菅直人
のブレーンの立場である自分が、この時期にこう発言して、正確に記事
に書かれて公表されれば、政治的にどのような影響を与えるか、小野善
康が理解できないはずがない。


この発言は、これからも何度も繰り返され、小野善康が来年からの消
費税増税を主張しているとマスコミが囃すだろう。小野善康は、財務
省と民主党の消費税増税の政策欲望を知っていて、それにお墨付きを
与えているのである。
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神野直彦氏について。
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それは神野直彦も同じである。二人とも菅直人財務省に利用され、
消費税増税の政策化の道具にされている。だが、道具にされている政
治的事実を、神野直彦もバカではないのだから察知しているはずだ。
状況を理解しているはずだ。


客観的状況を判読し、現在のクリティカルな立場を理解しながら、
敢えてマスコミに「誤解される」発言をするのは、単なる不注意や
迂闊では済まない。この二人の権威の名前で、今、消費税増税が政治
権力によって断行されようとしているからだ。


不注意だと言い逃れたり、マスコミの歪曲報道を責めるのは、知識人
としてあまりに無責任である。真実は、不注意でも無自覚でもないの
だ。二人ともそれほどバカじゃない。確信犯の自己欺瞞だ。気づいて
いながら、気づかないフリをしているのである。


神野直彦の持論は、社会保障を充実させることで社会基盤を安定させ、
経済成長を図ろうとする北欧モデルの経済政策である。悪くない。
だが、これは高福祉・高負担の経済モデルの志向であり、社会保障
整備するための財源の必要に議論が及び、すぐに高率消費税の選択へ
と誘導される。神野直彦も「高負担」の必要を否定していない。6/12
朝日新聞のインタビューを読み返しても、神野直彦の口から、「高
負担」の意味は所得税法人税だとは語られていない。記事の発言を
追うかぎり、明らかに「高負担」の意味は消費税であり、消費税増税
を正当化している。


この時局で「高負担」の必要を説けば、それが消費税増税の政策にお
墨付きを与え、世論に影響を与えることを、神野直彦は十分に自覚し
承知している。悪質なのだ。質の悪い(岩波文化人の)増税イデオロ
ーグ。
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そして、二人の高名な経済学者の心理。
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アカデミーの経済学者だから彼らが政治に鈍感だろうと思うのは、一般
大衆の浅はかで人の好い思い違いである。イデオローグは自分の立場を
知っている。そして発言の政治的影響を冷静に計算している。


一部に、青筋を立ててナイーブに神野直彦を擁護し、神野直彦は消費税
増税反対論者だとか、神野直彦新自由主義とは正反対の社民主義の立
場だと言い張っている妄言があるが、神野直彦が現在やっていることは、
明らかに、事実として、新自由主義の政策への加担行為である。


人は、自分の従来の思想信条を裏切ることはある。信仰と理想を捨てる
ことはある。人は改宗し、転向し、変節し、出世する。過去の自分を裏
切り、自分の仲間と友人を裏切る。それが人間であり、それが政治であ
る。裏切って、カネと女と食いものにありつき、地位と財産と権力を手
にする。


菅直人は、社会市民主義者として出発し、社会民主主義の闘士として名
を馳せ、革新から保守に転向し、岩波新書で官僚主導政治を批判し、
そして、今、財務省のマスコットボーイに転身した。菅直人の政策全般を
動かしているのは、神野直彦でもなければ、小野善康でもない。


霞ヶ関で「ミスター小泉改革」の称号を持っている、財務省事務次官
丹呉泰健だ。小野善康も、神野直彦も、自らの国民に対する「裏切り」
を内心で自覚しているだろう。岩波文化人というのは、出世欲や名誉欲
の塊の人間でないとなれない。小野善康神野直彦にとって、「菅首相
のブレーン」という地位と名声は重要なのだ。何ものにも代え難い勲章
であり栄誉なのだ。在野の一学者とは違う。そのリアルな人間心理は、
菅直人がどれほど首相になりたかったかを想像すればわかる。


(略)


政府で実権を持つ要職にあるのだから、財務省民主党に対して消費
論議に歯止めをかけ、マスコミの前では富裕層増税内部留保課税を
説くべきだった。マスコミが神野直彦増税論者として描けば、すぐに
その「歪曲」に異議を申し立て、抗議と反論を上げ、消費税増税論者た
る評価と紹介を否定するべく動くべきではなかったのか。神野直彦は動
いていない。マスコミのそうした記事(消費税増税の扇動への利用)
を放置している。つまり、裏切っているのだ。菅直人と一心同体なの
である。
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わたしが、救われがたい思いがするのは、小野善康氏・神野直彦氏と
おぼしいお二人の写真がついているが、二人が二人ともに少しも悪気
のなさそうな、にこやかな、魅力ある、善良な、穏和な顔立ちをなさ
っていることである。


既視感を覚える。短歌界にもこういうことがあった。ある。


わたしは、菊地英博氏インタビューから、神野直彦著『分かち合いの
経済学』がすばらしいと教えられ、その岩波新書を買ったのだ。
中はまだ読んでないが、まえがきとあとがきは読んだ。
あとがきを読んで、少し違和感をもった。
それが、この「世に倦む日日」氏の「心理」解説で、ひとりの人間心
理としてとても納得できた。


神野直彦氏は、目が不自由なのだそうである。東大教授であったが、
異端の道を進んで必ずしも経済学者として厚遇されないできたもの
のようである。しかし、良き理解者に恵まれて・・
・・・・・・・・・・・引用始・・・・・・・・・・・・・・・・・


昨年の紅葉の季節に、私は紫綬褒章を授与された。異端の思想を抱く
者にとっては、有り得ない出来事だった。私は戸惑いながら、ただただ
身を窄めるばかりだった。


・・・・・・・・・・・終・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


勲章のことはよく知らないが、東大教授・東大名誉教授の経歴があれ
ば、年月が来れば誰でももらえるのではないの? どうしてこんなに
恐懼するのか? ふつうもらえるのより、位が上の勲章でももらった?
 それとも同僚よりいち早く貰ったのがうれしかった?  


しばらく、この二行に違和感を抱いて、見つめたものだった。
それが、今日の「世に倦む日日」氏の解説で、氷解したのだった。
悪魔は神の面もちをしてやってくる・・・・