検察審査会、そしてメディア・・・・二つのコメントから

【斉藤政夫氏からの 2010/10/10付けコメント】
メディア堕落の様相について


内田樹氏のジャーナリズム談「『腐ったマスメディアの方程式』君たちは自滅していくだろう」を読みました。

氏のこの論説は突っ込みにかけるなー、と思いました。面白いけど物足りないです。
(同感。しかし、みんなの気持ちを代弁できるというのも、一つの才。代弁して
いるからでしょう、この記事はネット内のあちこちで引用・再掲されていました。)


大手メディアと私たちは情報の流通に関しては、製作・販売の側のメディアと情報の受け手としての私たちの関
係になります。メディアとそこに働くジャーナリストたちの行動はこの面から見ていく必要があります。

メディアの側の彼らは商業世界に生きており、そうなれば、おのずと彼らは経営に縛られます。要は売り上げ
(収入)です。だから、製作(つまり執筆やら報道)は会社の方針(編集方針)に縛られ、製作内容がそれに反す
(理性を見せ)れば首です。商品にはおのずと内容に限界が出てしまうのです。

(わかりますが、一面的な議論では? そういう新自由主義的発想の限界が、
今の日本にも見えてきている。そのことを内田樹氏は指摘していました。)


一方、一般の大衆は消費の世界にいて、その消費行動は生活必需品の優先度で決めます。したがって、新聞の
部数が減少するのは、新聞がもはや、生活必需品になっていないからです。

(これも、やはり一面的ではないでしょうか。第一、新聞がこんなに巨大部数
である必要もないのだしね。)


(中略)


そこで、問題です。この状況を改善する方策はないのか、と思うのです。

ヒントはネットの活用です。

2人の評論化のメッセージを紹介します。

内橋勝人(経済評論家):

新聞はじめメディアは自らジャーナリズムの衰退を招いている。新聞の
記事が沈降しているのも結局はするどさ、洞察力、奥行きの深い報道力に欠けているのに原因があると思う。

そこで組織ジャーナリストへの期待でなんですけれどなによりも未熟な民主主義をいかにして日本に根付かせ
ていくのかを考えて欲しい。また、政権交代の本当の意味・真意を深める視点を持つべき、組織ジャーナリス
トは言論の自由を言うのであれば、先ず一人一人が社内で言論の自由を獲得すること、それを目指すべきでは
ないかと思う。国民の皆様もメディアを峻別する厳しい眼、厳しく見極めるという、そういう眼を持つべきで
はないかと、こうおすすめしておきたい。(NHKラジオ ビジネス展望:2010年5月4日)


ノーム・チョムスキー言語学者マサチューセッツ工科大学教授):
私たちが孤立状態から抜け出し、近代民主主義が統率する思考の欠如から抜け出すもうひとつの道は、現在私
たちがインターネットを通して行うようになったインフォーマルな情報交換
と集会、そして孤立メディアをより重点的に利用することによって
「リポータ」―――実際はふつうの
人たち――が集まって自分たちの知見を議論しあうことだ。(『メディアとプロパガンダ』)


(斉藤様。上記二つの引用、よい発言をご紹介くださいまして、ありがとう
ございました。まことにそのとおりだと思います。いまのような状況下にあっては、ゲリラ的な「インフォー
マルな情報交換」、いわば昔ながらの口コミ、うわさ、これがいちばん根強いように思います。飼い馴らされ
ず、正気を保っていきたいものです。)


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【大光寺博子氏からの 2010/10/20付けコメント】


TBSラジオ森本毅郎スタンバイの金曜日のコメンテーター小沢遼子さんが先週面白い事言ってました。検察
審査会法を調べたら審査員になれない人が明記されているそうです。天皇
はじめ皇族方とか職業にも制限がありなれない人がたくさんいて、その中に被害者も入っているそうです.
今回の告発の目的は、国民から選ばれた政治家の犯罪は国民全体が被害者となるためらしいのですが、そう
なると審査員は日本国民以外の人から選ばれなければいけないことになる。
この法律は根本的におか
しい法律だろう、と言ってました.とてもわかりやすいお話に納得した次第です。しんぼう君のお話は感情的
おちゃらけでちっとも説得力がありません。

(笑っちゃいました。ほんとにそうだ。行政法が専門の桜井氏も、こんな法律
どういうつもりで作ったのか、と絶句してましたね。
ところで、辛坊氏って、「元読売テレビ放送報道局解説委員長」だったんだ
ってね。あら〜、芸人かと思ったらほんとにエラかったんだ。すると、似非芸人ではなくて、似非ニンゲン
だったってわけですね。似非モノが横行する世の中、なんとかなりませんかね)。


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以下は、ふろくで、毎日新聞のひさかたぶりのまともな記事です。署名は和田武士記者。
こういう良識ある記者に勇気をもってがんばって欲しい。わたしは、さっそく応援のメールを
いれておきました。


http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20101019ddm004070016000c.htm

記者の目:検察審査会の強制起訴制度=和田武士(東京社会部)



 ◇強大な権限に見合う仕組みに 
一般市民11人で構成される検察審査会は09年5月に権限強化され、検察が不起訴とした容疑者を強制的に
起訴できるようになった。その現状と課題を探る朝刊連載「検察審査会」(9月20日から5回)を担当し、
審査員経験者十数人を取材した。やりがいや司法制度への思いを語る姿に市民参加の意義が垣間見えた。
同時に、制度の将来に不安も感じた。「感情論が先行しているのでは」との懸念もあり、強大な権限に見合う
仕組みになりきっていないと思う。


 連載で紹介したが、審査員経験者の斎藤猛さん(48)=山口県宇部市=は冤罪(えんざい)被害者だ。
02年、勤務先の焼き肉店の売上金を着服したとして逮捕、起訴され、1審は実刑判決。控訴審中に別人物の
関与をうかがわせる証拠が見つかり、逆転無罪が確定した。


 ◇起訴=犯人視 冤罪被害の恐れ
 私が会った審査員経験者の多くが「公開された裁判で有罪・無罪を判断すべきだ」との考え方だったが、
斎藤さんは「人ごとだから言えること」と批判した。起訴されれば99・9%が有罪になる現状や、それを
背景にした報道が多い実態も踏まえ、「社会は起訴された人を犯人だと見る。検察審査会の判断がいつも正
しいとは言えず、冤罪被害を生む危険がある」と語った。


 刑事裁判の原則は「無罪推定」だが、現実には起訴されれば、最終的に冤罪が晴れても多大な不利益を被る。
「やっと胸のつかえが取れた」。郵便不正事件で無罪が確定した厚生労働省村木厚子元局長(54)が、
約1年3カ月ぶりに職場復帰した際の言葉には裁判中の苦労がにじむ。


「あなた方の議決で強制起訴された人が無罪になったらどう思うか」。審査員経験者たちに尋ねた。40代
男性は「一般人の場合、起訴されただけで人生が終わってしまうようなところはある」と漏らしたが、別の
年配男性は「ある程度仕方ない」と話した。答えの多くは、法廷に立つ「被告」の境遇について、どこか人ごと
という印象を受けた。


 検察の不起訴に納得できず、公開の裁判での真相解明を求めて検察審査会を頼る被害者・遺族の心情は理解
できる。兵庫県明石市の歩道橋事故(01年)やJR福知山線脱線事故(05年)で出された起訴議決は、
そんな思いをくみ取ったものともいえるだろう。


 だが、民主党小沢一郎元代表政治資金規正法違反で起訴すべきだとした東京第5検察審査会の議決は、
その当否は別にして、理由に疑問を感じた。議決要旨(10月4日公表)で「国民は裁判所によって無罪なのか
有罪なのかを判断してもらう権利がある」と明記したが、ある法曹関係者は「当事者ではない事件にまでそんな
権利があるという解釈はあり得ない」と指摘する。「国民の責任で黒白をつけようとする制度である」とも
書いたが、「国民の責任」との表現に違和感を持つ人も少なくないと思う。



 ◇助言者発言権や情報公開強化を
 連載中、大阪地検特捜部の主任検事による証拠改ざん事件が発覚した。検察の信頼は失墜し、その在り方が
問われる中、検察審査会は存在感をより増していくだろう。だからこそ、健全に機能させるためには改善すべ
き点が多い。


 一つは審査の密室性だ。審査員の自由な議論を確保するための守秘義務があるとはいえ、開示される情報が
あまりに少ない。不当な圧力などから審査員を守るために匿名はやむを得ない。しかし、少数意見や反対意見
を含めて11人それぞれの意見、議論に費やした時間などは公表しても差し支えはないはずだ。


 審査に加わり法律的な助言をする弁護士(審査補助員)の位置付けも再考の余地があろう。裁判員制度
プロの裁判官も評議に加わるが、検察審査会はあくまで市民だけで判断する。このため、審査補助員は法律
で「自主的な判断を妨げるような言動はしてはならない」とされている。取材では、審査補助員が誘導になら
ないよう意識しすぎて萎縮(いしゅく)している印象を受けた。政治家が関与する事件や被害者の多い事故
では、感情的な議論になるとの指摘もあり、法律の専門家として「助言」にとどまらない一定の発言権を確保
することも必要ではないか。現在は「1人」と規定されているが、複数にするのも選択肢の一つだろう。


 負担が大きいとされる検察官役(指定弁護士)をどうバックアップするかも課題だ。


 検察審査会裁判員制度のスタートと同時に権限強化されたが、裁判員の陰に隠れ、議論不足だったとも
言われる。これまでの起訴議決4件を詳しく検証し、課題をあぶり出して速やかに解決することが不可欠だ。
市民で構成される検察審査会が、市民から共感を得られない機関になってはならない。

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