孫崎享氏による尖閣問題の分析・・・by 岩上インタビュー  そしてコメントからTPP問題

孫崎氏の尖閣問題分析については、ツィートを何度か紹介しましたが、これは
岩上氏によるインタビューです。濃縮したツィートをわかりやすく説明。
三部あって、わたしは今日は二部を視聴。あと第三部が残っていますが、やはり
これは必見と思い、ご紹介します。


http://iwakamiyasumi.com/archives/4814#more-4814


第二部は、アメリカとの関係が中心に語られています。
日本の政治は、日本人がやっているのではなく、日本人の皮をかぶったアメリ
がやっている・・・と、まあ、わたし流に言えば、そんな内容が語られています。
ことに、今年の後半はさまざまな意味で重要な時期、そこに照準を合わせて用意
周到にブループリントが作られ、そのとおりに動いていると。


昨春の小沢一郎民主党代表ひきずりおろしから、それは始まっていることが明らか
です。ヒラリーが小沢一郎と会見、「第七艦隊だけでいい」という発言が取りざた
されたことがありますが、あのへんから本格的に筋書きどおり動きはじめていたと
思われます。


孫崎さんによると、日本くらいアメリカの工作がうまく行く国はないんだそうです。
ナベツネアメリカのエージェントだと知らないものはないのに、失脚どころか
隠然たる権力を握っていますからね。これが中国のエージェントだとわかったら
たちまち失脚追放されるでしょう。


それにしても、これまでにないほどにあからさまで、強引で、腕づくでねじ伏せて
くるような力が働いているというのが実感です。


昔、「自前芸者」という言葉がありました。借金をせおっての身売りではない芸者
のことを言うらしい。
日本は、ダンナ持ち「自前芸者」から、病気で死ぬまで絞り上げられるヒモつき芸者
に身を落としていくようです。
一億総ヒモつき芸者で、なかに女衒のようなのが極少数いる。目前にこんな構図
がせまってるようで・・・


以下は、金子勝氏ツィート集に対する斉藤政夫氏コメントから。
斉藤さんは経済に明るい方のようで、皆様のご参考になるでしょう。


金子さんも嘆いてばかりでなく、もっと未来に向かってもらわなければ救われない
というご意見、そのとおりだと思います。
ただ、発信力をもった金子さんがあのように書くというのは、よくよくのことと思われ
ます。日本のメディアは壊れている。ウソばかり言っている。ウソを訂正するだけ
で疲れる。そう、たびたび言っています。「世論」形成がなされていく力の大きさに
絶望を覚えないではいられないのでしょう。


日本のメディアは、敵地に乗り込んだらまず放送局をおさえるように、押さえ込まれて
います。いっせいにそれが始まったのが、昨年春からです。
ついに、耐え切れなくなって、わたしのようなものが、こんな「あんてな」を張らざる
を得ないようになりました。ひとりでも多くの人に、聞くべき意見を流通させていく
ための中継地点です。


わたしは経済も法律も政治も、まったく無知のものです。
ただ、何がほんとうか、何がまっとうか、誰の言っていることがまっとうか、という
ことだけは、わかります。そういう勘だけは鈍らせないように、日々「修行」して
きたつもりです。
無知なままにとりあげた経済や法律や政治の分野での話題を肉付けしていただけることを
とてもうれしく思います。


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11月14日付け斉藤政夫氏コメント



一昨日、APECが閉幕しました。このタイミングで金子教授の話を興味深く読むことができました。
言っておられることに同感です。それに少し補足させていただきます。


金子教授は「未来には予想を超えたイニベーション」が起こりうるんです、と言っています。
イノベーションを単に技術革新という意味で言っているのか、それとも、「人・組織・社会の幅広
い変革」という意味で言っているのかわかりませんが、前者の意味なら、その手法はもう限界です。
技術革新による生産性の増大は市場が無限にあるときに有効となりますが、市場は有限ですので有効
な手立てにはなりません。すでに経済がグローバル化している現在では、その手法は行き詰まります。
市場は無限に広がる平面ではなく球面(地球)にありますから。グローバル化した世界ではとことん
市場・資源・食料の奪い合いがつづき、みんなが倒れるか、その前に世界の構造が変わるかのどっち
かです。ぜひ、「人・組織・社会の幅広い変革」があってほしいと願うわけですが、自動的にそんな
ことが起きるとも思えないのです。


管政権は昨年末に「新成長戦略」をまとめましたが、同志社大学大学院、浜矩子教授は今後の日本の
経済戦略にとって必要なことは成長戦略ではなくて、成熟戦略だと言っています。分かちあいの構図
が必要と言っています。うなずける話です。民主党のいう新成長戦略は需要の創出、GDP成長率の増大
を基調にしていますが、市場は飽和しつつあるわけで、無理があると思います。


TPPについて言えば、2つの視点を考える必要があります。
1. TPP参加を誰が仕掛けているのか、という視点

アメリカにおいては、昨年12月14日、カーク米通商代表は議会に「オバマ大統領によるTPP協定交渉へ
の参加の意向を表わす」書簡を提出し、TPPへの参加を訴えていました。その背景には、「戦後アメリ
カ中西部の穀倉地帯の農家たちは余剰穀物の輸出を強力に推し進めてきた。そうしたアメリカの国益
先兵として、穀物メジャーは政府に貿易障壁の撤廃を働きかける一方、日本をはじめ世界各地の国々に
対し、安価なアメリカ産穀物を大量に消費する食生活や農業の普及を働きかけた。一方各国では食の
アメリカ依存』を進めた結果、食料自給率が低下。そのつけが今、一気に押し寄せているのだ。」
という事情があります。(NHKスペシャル 世界同時食料危機、2008年10月19日)


日本においては、経団連が、今年の6月に「アジア太平洋地域の持続的成長を目指して 2010年APEC議長
国日本の責任」という提言を発表しました。その中で、「わが国企業のグローバルなサプライチェーン
考慮すれば、このような経済統合の動きを環太平洋に着実に拡大していく必要がある。その際、米国との
間の橋渡しの役割を果たし得る経済連携の枠組みが必要である。経団連では、そのような枠組みとして
日米EPAの締結を予て主張している。わが国企業が競争上不利な状況に置かれないようにするためにも、
また、わが国が資源の確保に支障を来さないようにするためにも、TPPはじめアジア太平洋地域に跨る
枠組みに積極的に参加すべきである」と、述べているのです。企業の競争優位に焦点をあてていますが、
国内市場の保護については関心がありません。


2. 大手メディアによる世論誘導の問題

大手メディアは「農業市場開放」やTPP参加に向け大合唱しています。

読売の社説:「日本がTPPに不参加なら、経済発展に欠かせない枠組みから締め出されて
しまう。日本抜きでアジア太平洋の貿易や投資のルールが決まる不利益も懸念される。だからこそ、日本は
早期に交渉に加わり、貿易自由化の段取りやルール作りについて、積極的に関与していく必要がある」
(2010年11月4日付)


朝日の社説:「いまから交渉に加わって、主要な農産物を関税撤廃の例外にしたり、自由化までの経過期間を
長くしたりするよう主張する手もある。菅首相横浜市で来月開くアジア太平洋経済協力会議APEC)首脳会
議の席上、TPP交渉に乗り出す考えを表明すべきだ」(2010年10月26日付)


また、「農業市場開放」については、大手6紙(読売、朝日、毎日、産経、日経、東京)はどれも市場開放の
方向で一致しています。
http://nakane.txt-nifty.com/blog/2008/02/post_9680.html


一方、テレビでは、FNN(フジ・ニュース・ネットワーク)がTPPについて10月31日までの2日間、全国の有権者
1,000人に世論調査を実施し、「原則すべての関税を撤廃するTPPの参加については、『適切と思う』が5割を
超え(52.0%)、『思わない』(27.0%)」という、結果を発表しました。その時点では、まだ、国民はTPPについて
十分な情報を得ていない状況なのに、調査が実施されています。その結果からメディアは「TPP参加は国民に
支持された」といわんばかりなのです。世論の誘導ではないでしょうか。


金子氏はNHKラジオ番組で「アメリカと自由貿易協定を結んでも利益はない。TPPを結べばアメリカの産業に
有利な条件を実現するという対日要求が強まる」と、言っています。詳細はNHKオンライン(ラジオあさいち
ばん)で聴くことができます。以下のリンクを辿ってください。金子氏のほか、日本総合研究所理事長寺島実
郎氏、経済評論家、内橋克人氏がTPPの問題点について語っています。
http://www.nhk.or.jp/r1/asa/business.html


参考までに、内橋克人氏の話を載せます。「穀物の自給は世界の常識だ。日本の食糧自給率はあまりに低い、
先進国の中で異例中の異例といえる。たとえば穀物自給率は28%、小麦14%、大豆6%、飼料の原料のとうも
ろこしは全量が輸入だ。そのうち99%がアメリカから買っている。食料は安い国から買えばよいと、ある大学
の研究者が発言してけれども、これは世界の現実を知らない言葉と思う。そもそも世界で生産されている穀物
のうち貿易に向けられているのはわずか1割だ。特定国でなければ買えない仕組みになっている。だからちょっ
とした変動で価格が暴騰するという構造になっている。TPP参加で食料の他国への全面依存になるという心配が
ある」(「NHKラジオ『TPP交渉参加の是非』10月26日)


金子氏は「大不況的状況を脱する世界構想が不可欠です。」、「この厳しい現実に真剣に向き合う人々は5〜10
年はもつ新しいパラダイムを体系化していかないと」とも述べていますが、構想やパラダイムも大事ですが、
国民が現状の問題をしっかりと見つめて、見識を深め、協同で正しい世論を形成してことのほうが大事だと
思います。政権交代はそういうところの可能性を示しました。まだ、いままでの古い政治に代わる新しい政治
とは何かについては結論がでていませんが、探求の途上にあるということではないでしょうか。


だから、「民主党政権はもたないかもしれませんが、その先にも未来はありません。」などと嘆くのではなく、
明るい未来への展望をもって知識人、インテリ、市民が力を尽くすことが大事であると考えます。

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