週刊ポスト「小沢一郎最後の闘い」120分独占インタビュー by 渡辺乾介

きのう電車で吊革につかまってたら、座席でおじさんが週刊ポストの「小沢一郎最後の闘い」のページを拡げていました。


週刊ポストって、買いづらいですよね。日刊ゲンダイは、最近は、堂々と買ってますが、週刊ポストはね、、、、

そんな方に朗報。こんな転載記事がネットに流れていました。
内容は、これまでのインタビューで聞いてきたものが多いですが、なんど聞いても納得がいきます。政治に限らず、どの分野でも、こういうまっとうな考え方が通る世の中にしたい。おてんとさまが見てるよ、という言葉が通ずる世の中にしたいものです。


以下は、Roentgeniumという方の書き起こしで、間にご自身の注記が入っています。
ここでは、それらを省略しますので、リンク元でご確認ください。
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http://www.asyura2.com/10/senkyo102/msg/672.html

(前略)


≪[独占120分インタビュー] ついに沈黙を破って、すべてを語る!小沢一郎「最後の闘い」 - 『週刊ポスト』 2011年1月7日号(12月20日発売)掲載≫



坂の上にいるのは総理大臣・菅 直人で、誰しも「政治とカネ」で満身創痍の元代表小沢一郎が下にいるのだろうと見る。


豈図らんや(あにはからんや、意外にもの意)、小沢が上にいたとは。そう思わせるインタビューだった。意外性に満ちた倒錯は何故、起きたのか。政権交代を齎した「国民の生活が第一」の原点を見失い、早々に<政権の正義>を失ってしまった菅と、その錦の御旗(みはた)を掲げてたじろがぬ小沢の立ち位置の違いだろう。不動と動揺の好対照の中、小沢が笑い、獅子吼(ししく、雄弁をふるうこと)した独占120分の熱い舞台――。


レポート/渡辺乾介 『小沢一郎 嫌われる伝説』著者


菅首相は「政治の作法」が悪い】


民主党政権が進むも退くもままならなくなっている。小沢氏を力ずくで政治倫理審査会(政倫審)に出席させようとした菅首相と官邸派と岡田執行部による予算編成そっちのけの一人芝居は、国民をさらにシラケさせた。どうしてこうも、やることなすことが後先逆になるのか。単に間の悪さを笑うだけでは済まなくなってきた。


7月参院選直前の菅首相の「消費税」発言で、この<小沢抜き内閣>は先ず泥沼に足を取られた。選挙に惨敗して腰まで浸かった。そこで退陣していれば、菅氏をしてこうまで醜態を晒させる事はなかっただろうが、9月代表選で再選された。


再選した結果責任の十字架を誰が背負うかさえ定かならぬまま、不況対策の切り札と意気込んだ補正予算は成立が遅れに遅れ、中国の尖閣諸島、ロシアによる北方領土の政治姿勢に挟撃され、身動きが取れなくなった。「脱小沢」などと大見得を切ったツケが菅内閣を襲っている。挙げ句、国民にはミエミエの“反小沢ショー”で失地回復を目論んだが、失敗した。


菅首相とその取り巻きの至らざるところは、個々の能力、資質もさることながら、政治運営の作法の悪さにあると言っていい。だから、いくら自民党公明党に協力を求めても信頼されない。大メディアに持ち上げられた心地良さが忘れられないのか、「脱小沢」「反小沢」を言うにしても、政権交代の最大の功労者に一片の敬意も表さず、足蹴(あしげ)にする作法、礼節のなさが人心を離れさせたことを、未だに気付こうとしないのである。


菅内閣は今や権力の砦に篭城しているかのようだ。当然、国民との距離は開くばかりだ。打つ手が小さく、変心が早く、コトの運びが下手なのである。


不謹慎の誹り(そしり)を恐れずに言うなら、<小さい、早い、下手>――。が、それでは“男・菅 直人”も立つ瀬があるまい。先ずは作法を正し、次なる小沢の言説を眼光紙背(がんこうしはい、紙の裏まで見通す意)に徹して熟読することをお勧めする次第――。



【ライオンの勇猛、狐の狡知】 ※ここからインタビューが始まります。


――ねじれ国会の中、与野党が本来の政策論争そっちのけで、政党間の打算と政治家の駆け引き、対立を目的化する事態に終始していると、議会が空洞化して民主主義の死を招くのではないか。やがて内閣と政府は機能不全を起こし、国が無政府状態に陥ってしまう。


その結果、国民は政治に不信感を募らせて、「こんなことなら、いっそお役人に任せた政治、社会のほうがいい」と、お上依存の官僚主導国家に郷愁(きょうしゅう)を抱くようになりはしないか。


しかし、それではあなたが実現した政権交代に逆行する。二大政党をつくって、この国に真の民主主義を定着させたい、そして「自立と共生の国」を目指すというあなたの政治理念、夢とはかけ離れていく。


そういう中で、目の前で常軌を逸したような小沢潰しの政治的狂乱状態が起き、大メディアを引き込んで、社会的な騒擾(そうじょう、集団で騒ぎを起こし、社会の秩序を乱すこと)を醸し出している。要するにあなたが目指す改革、国づくりを絶対に受け入れられないという勢力、すなわち既存の利権システムを温存しようとする勢力の抵抗が凶暴な姿を見せている。


このままあなたは「背徳の政治家」として去っていくのか。それとも、改革者として再び立ち上がろうとしているのか。瀬戸際の戦いに挑んでいるのではないかという印象を持つ国民も多い。


小沢 (厳しい表情で)現状の民主党の政権と政治がこのまま続くとすると、国民の政権交代への期待を損なってしまう可能性が非常に高いという心配を、私自身、強く持っております。


人間のやることですから、100%言った通りのことが出来ないのはままあることです。けれども、去年(09年)の夏、あれだけ国民が勇気を振るって政権交代を選択した。特に日本の国民は大きな変化を嫌う国民性ですから、半世紀以上も続いた政権を代えるという決断は、大変な勇気を必要としたと思うんですね。そんな決断をしてまで民主党政権に期待した。そして、我々は何としてでも国民の生活を守っていくという民主党政治の理念と目標として、「国民の生活が第一。」を掲げて支持を得た。


ところが、今、1年半近くになんなんとするんだけれども、最近とみに国民には民主党政権大義の旗が見えなくなりつつある。非常に残念に思います。


やはり我々は、最後まで理想の旗を高々と掲げて、国民と約束した目標に向かって一生懸命努力する。その姿こそが尊いのではないかと思うんです。総選挙の初心に返って、本当に国民の期待する政治、政策を実行しなければならない。


民主党はみんな、政権の座にきちんと座って政権を動かしたという経験がない人ばかりだから、無理もないといえば無理もないんですけれども、しかし、実際に資質や能力が欠如しているところはあっても、一生懸命それを補って、努力と誠意で頑張る姿勢が必要じゃないかと思います。民主党政権の現状では、多分、官僚諸君も困っているんじゃないか。それぐらい深刻な状況にあると思っています。


その1つの大きな原因として、ねじれ国会とよく言われますけれども、僕はそれは全く原因にならないと思っているんです。僕が21年前に自民党の幹事長に就任した時も、やはりねじれ国会でした。しかし、PKO(国連平和維持活動)協力法案もつくりましたし、消費税の実現も果たしました。


それから、私は政倫審に出るのを嫌だと言ってるわけではないんですよ。


ただ、論理的に言いますと、僕は捜査当局では不起訴となりましたが、検察審査会では公判廷でもう一度事実関係を明らかにせよという結論になったものですから、いわば司法の場に移っているわけです。


そして近々公判が開始されます。そのような裁判を今後行なうことが確定している私が、国会の政倫審に自ら出席しなければならない合理的理由はないと思います。何故なら政倫審の審査や調査は、立法府の自律的な機能であり、司法府への介入を避けるなど慎重なものでなければならないからです。



――マキャベリは『君主論』の中で、「為政者(いせいしゃ、政治を司る立場の者。政治家、官僚など)たる者はライオンの勇猛と狐の狡知(こうち)を持たなければならない」と言っている。

小沢 (頷いて)うん、うん。


――突飛な訊き方ですが、あなたはそういう意味でライオンですか、狐ですか。


小沢 (笑いながら)ここは多分、ライオンの強さが必要なんでしょうね、今の現状では。悪い意味で言えば狐の狡さ(ずるさ)というのは、ライオンの強さで大義を推し進める時の小道具としては必要かも知れないけれども、今必要なのは、やっぱり勇猛さ、強さ。きちんとしたスタンスを持って、勇猛、果敢に取り組むということじゃないかと思いますね。これは国内政策だけじゃなくて、対外的な関係においても、小賢しい知恵を出して解決出来るというものではない。


――菅さんは「ズル菅」の異名をとる人で、「狐」に通じる。ライオンと、その狐が協力し合えば政治にはなるでしょう。


小沢 それが政治論で言えば挙党一致なんですね。菅さんもあの時(民主党代表選)に「412人の政権だ」と言ったんですが、それが政権に就いた途端に、とにかく「脱小沢」「反小沢」を言っていれば人気が上がると思っているようです。確かに最初、新聞、テレビの世論調査ではそうでしたけれども、しかし、国民もわかってきた。何も成果が上がらないから、支持が落ちているんだろうと思っています。


――狐はライオンから逃げることしか考えない。


小沢 ふふふっ。


――官邸も執行部も国会対策と言いながら、その展望すら持っていない。それでも政倫審に出ろ、嫌なら離党だとするやり方というのは、国民にとっても、本当に不幸な猿芝居だ。


小沢 ちょっと考え方が違うんですね。柳田(稔・前法相)さんの時も、あれは軽率な発言でけしからん話ではあるが、彼を事実上クビにしたわけでしょう。ところが、そうやって野党の要求を呑んだ以上は、次の国会運営の展望が描けているのかと思ったら、全くない。それで、ある幹部が「首だけ切って、野党と何も話していないのか」と言ったら、党の要の人が「そういうことを話し合うのは55年体制だから、一切話し合いはしない」と答えたという。ちょっと政治に対する考え方とか、見方とか、そういうものが違っているのかも知れませんね。


――戸惑っている?


小沢 うーん、そうですね。民主主義社会の議会ですからね、与野党の話し合いを否定したのでは、何も成り立たなくなっちゃう。ルールも秩序も何もないということになって、ちょっと奇異に感じますね。




【「田中法廷」で考えた政治の意味】


―― この夏頃から全国各地で「小沢支持デモ」が起きている。インターネット上の呼びかけで自然発生的に1000人以上集まる。普通の市民が自発的にいわゆる「政治とカネ」の問題を調査したり、検証したりしている。特定の政治家に対して、国民がそういう形で集会やデモをすることなどかつてなかった。


小沢 みんな互いに知らない人たちなんですってね。


――そうです。


小沢 それが自然発生的に起きるということは、日本の社会ではなかったことじゃないですかね。僕も大変感激しているんですけれども。


――ある意味で、あなたが国民政治家としての新たな評価を与えられたと言えるのではないか。


小沢 僕から見ると、日本の民主主義が、ようやく国民レベルで目覚めてきたんじゃないか、という気がします。主権者たる国民に、市民が声を上げなければいけないという意識が芽生えてきたことが、僕自身のことよりも非常にいいことだと思っています。


――大メディアから叩かれ続け、社会に絶望しているかと思ったら、全然明るい。


小沢 (笑い)だから多分、この永田町や財界、或いは大きな新聞・テレビ、霞が関、そこの人たち以上に国民の皆さんのほうが、意識は進んできたと思う。


――なるほど。

小沢 今挙げたのはアンシャンレジーム(直訳すると「古い体制」、狭義には大革命以前のフランス社会を指す)、旧体制の牙城の中で、自分たちの利権、既得権を守ろうとしている組織、集団だからね。その点で僕はものすごく将来への光明を見出しています。


――しかし、ネット社会の新しい展開を、多くの国民はまだ知らない。


小沢 新聞、テレビが無視して、全然伝えないからね。


――「小沢糾弾の市民集会」ならば報道するだろう。


小沢 (苦笑しながら)うん。本当にね。

ただ、国民の皆さんのほうが早く目覚めてきているというのは、1つには新聞、テレビ以外のメディアが増え、それを利用する人たちが急増したからですね。それが様々なネットです。しかも、ネットを利用する人たちは、かつては行動しない人たちが多かったですよね。ところが、今はお互いに呼びかけ合って行動するようになってきたでしょう。


――ええ。

小沢 選挙でもそうなんですよ。これは7〜8年前かな、自由党はネットでは常にダントツの支持率だったんです。だけれども現実の選挙では1割しか獲れなかった。でも今は、ネットの声が現実に近付いてきた。


――国民は「政治とカネ」の報道漬けにされ、小沢は不正な金で不動産を買ったとか、そういう印象を刷り込まれてきた。あなただって人間だから、憤怒(ふんぬ)のマグマがたぎっているんじゃないか。


小沢 肩が痛かったり、腰が痛かったりね(と苦笑い)。体は、まあ大丈夫だけれども、なるべく新聞、テレビは見ないようにしている。


――もう何もかも放り出す気は起きないのか。


小沢 時々思いますよ。もう面倒くさいと思う。もういいやと。でも、達観しているんですよ。天の命ずるままにする。天に必要とされれば生かしてくれるだろうし、必要とされなければ去ればいい。


だけれど、とにかく二大政党が両方とも駄目になると、日本の政治が混乱して、恐ろしいことになりますからね。欧米でもネオナショナリズムの支持がどんどん増えているでしょう。日本の場合、もっと極端になりますよ。そうなると民主主義はおしまい、日本の将来はなくなっちゃいますから。


――あなたは知略を尽くして政権交代に漕ぎ着けた。その民主党の中から離党だとか、新党だなんて話を言われると、普通は膝が折れますよ。


小沢 まあ、ちょっとね。民主党と合併した時から思っていたことだけれども、民主党は党内政局レベルの発言が多過ぎるんですよ。けじめというものがないんです。


やはり党や政府の重要な役職に就いたら、普段は派閥の会合なんかに出ちゃいかんのです。基礎的な訓練というか資質が問題というか、ぽっと(大臣や党幹部に)なっちゃったから、そういうものが欠けているじゃないでしょうかね。だから、国民にも役人にも馬鹿にされちゃう。


――3年前の大連立問題の時も、民主党には政権担当能力が欠けている、と。


小沢 「欠けていると、みんながそう言っている」と言ったんだけれども、現実にこのままだと、やはりそうなんじゃないかという話になりかねません。何とかしないといかんでしょうね。


――「政治とカネ」を巡っては、あたかもナチスの諜報宣伝のような・・・・。


小沢 ゲッベルスだね。


――大メディアばかりか、政権中枢、野党の「小沢は悪」という政治宣伝によって、国民は一方向に引っ張られている。


小沢 とても異常で、危険なことです。国会議員が自分の責任と使命を自覚して行動しないと、民主主義は成り立ちません。特に政府・与党の重要な地位に就いた方々は、古い言葉で言えば天下国家、天下万民のことを考え、王道を歩まなければならない。


――私は10数年前、あなたが田中角栄の公判を欠かさず傍聴したことについて、「他山の石としようと思っていたのか」と質問したことがある。あなたは、


「他山の石というと、それを参考にして、自分ならこんな失敗をしないということになるが、そうではなく、政治家がああした嫌疑を受けて、法廷の場で争うという状況になっても、それでも政治を続けるという意味かな、それは何なのかとか。または、日本の政治はどうあるべきなのか、自分だったらそうするかといった反問もあったね。そういうことをいろいろにずっと考えながら傍聴していた」≫≫


と答えた。

翻って(ひるがえって)今、あなた自身が苦境にあって政治を続ける意味と意義とは何か。


小沢 60年間も本格的な政権交代がないなんていうことは、民主主義ではあり得ないことなんです。そのことに気が付いて、国民が大英断を下したわけだから、それにきちんと応えて実行してくれる政治家がいれば、僕はもうゆっくり隠居して遊んでいればいいんだけれども、どうも今のままだと国民から評価されない。

逆に、あの政権交代は何だったんだというような言われ方をしている。でも、日本に民主主義を定着させる為には、この民主党政権は絶対に失敗させられないから、例え自分自身がどんなに言われようとも、何とか成功させたい。その一念ですね。




【「薄汚い金はびた一文ない」】


――多くの人々は「政治とカネ」という5文字だけで「小沢は悪」と言う。では、その中身は何だとなると、説明出来る人がいない。


小沢 そうそう、そうそう。


――わからないんです。


小沢 何が問題だったんだと思います。


――それでも国民はイメージを刷り込まれる。


小沢 あいつは悪いことをしているんだ、みたいなね。


――09年の違法献金事件では、検察は秘書の大久保隆規氏をいきなり逮捕・起訴し、1年過ぎたら起訴した訴因を変更してしまった。


小沢 そう。


―― その時は贈収賄だ、談合だと民主党内も騒いだ。その結果、あなたは代表を辞任した。1年経って「あれはそうじゃありませんでした」となったわけだが、これを新聞は小さくしか書かない。あなたがあのまま代表として総選挙に勝っていたら、小沢内閣が出来た。民主党政権の状態は全く違ったかも知れない。そういう重大な責任を誰が取るのか。


小沢 僕はね、何回も言うように、国民はわかってきていると思いますよ。去年(09年)の3月でしょう、うちの秘書が突然逮捕されたのが。


――ええ。


小沢 もう連日、新聞、テレビで犯罪者扱いされ、2カ月、3カ月近くやられたんです。それで、僕は代表の座を降りて鳩山さんに譲った。


――はい。


小沢 しかし僕は総選挙の責任者になって陣頭指揮をし、総選挙に圧勝したんだから、新聞、テレビが騒いでも、国民はかなり理解してくれていたと思うんですよ。国民は政治資金がどうだとかではなくて、国民主導の政治、「国民の生活が第一。」の理想を(民主党政権が)実現してくれるかどうかを見ていたんだと僕は思うんです。


今の不人気は何かと言うと、国民に訴えたあの理想の旗はどうしちゃったのか。霞んでもう見えなくなっちゃった。旗を降ろしたのかと、国民が思っているからですよ。最初から理想の実現は厳しいことがわかり切っているんだから、がむしゃらに努力しなければいかんでしょう。ところが、国民に約束した政策の中身を忘れたような顔をされては、冗談じゃないよ、という失望だと思う。


――石川(知裕)議員が逮捕された陸山会の土地購入問題でも、多くの人が段々わかってきた。


小沢 秘書を通じて僕が不正な金を1億もらったと。それで土地を買ったんだろうと。それを誤魔化す為に(政治資金の収支を)操作したんじゃないかということでしょう、要は。


――ええ。


小沢 そんな金は、びた一文もらっていないですよ。そんな薄汚い金を、僕は。


――検察は、脱税で刑務所にいた建設会社元会長の「小沢の秘書に5000万円渡した」という“証言”に飛びついた。ホテルのロビーで渡したという。


小沢 常識的に考えてもそんなバカな話はあり得ません。


土地購入の問題は、(収支報告書の)報告の期日がずれたというだけの話です。(闇献金を)もらっていたなら、僕は(検察に)起訴されていたと思います。不動産を買ってどうのこうのと言われていますけれども、僕だけでなく、不動産を買っている政治家は他にいっぱいいる(中でも悪質な町村信孝〔自らを棚に上げ、補選で小沢批判をし当選〕、江田憲司に加え、他にも多数)。どうして僕ばっかり追われているのかわかりません(苦笑)。


自民党もこの通り、政治資金でゾロゾロ土地を購入していた(一覧あり) - 日刊ゲンダイ 2010年3月9日
http://eritokyo.jp/independent/aoyama-col15579.htm


――不動産は秘書の寮であること、原資や購入の経緯についてもあなたは書類を公開して説明したが、大メディアは無視した。


小沢 一般の人でも高い家賃を払うより、ローンを組めるなら(住宅を買って)、手元に資産として残す。(陸山会の土地購入も)浄財がちゃんと政治団体のものとして残っている。契約は全部、陸山会代表として僕が行なっているわけですから何も問題ないでしょう。


――検察審査会の問題も、専門家の間で疑問視されている。いろいろな日本社会の歪みというか、透明性のないところがリンクして、最も象徴的にあなたの「政治とカネ」問題に集約されているようにも見える。


小沢 本当に僕も秘書連中も非常に辛い思いをして・・・・。ただ、それを別にすると、捜査の結果として僕は不正な金をもらっていなかったということが証明されたわけだから、その意味で良かったなと思っているんですよ。




【メディアを恐れず発言する基盤】


―― 今回のインタビューに当たって、何人かの識者に「小沢一郎に何を訊きたいか」という意見を求めた。記者会見開放に取り組んできたジャーナリストの上杉 隆さんは、「菅政権になってから官房長官会見のオープン化やぶら下がり会見の廃止、月1回程度の首相会見の約束も、何一つ果たされていない。民主党政権は記者会見オープン化から交代しているように思う」と言っている。

あなたは、政治家の中で誰よりも早く記者会見を開放してきた。どう思うか。


小沢 僕は記者会見のフルオープンを主張しているから、これまで通り会見をクローズドにして情報の独占を続けたい大メディアにやられている(笑い)。(記者会見には)誰でも出られるというのが一番いいと思います。僕は政治資金だってオープンにしてきた。僕一人でしょう。全てオープンにしているのは。

オープンな社会にして、そして公権力の取り締まりは出来るだけ少なくして、判断は主権者自身がやる。それが本来の民主主義です。


政治資金だって、極端に言えば、誰から貰ったっていいんですよ。外国からは別ですけれど。何に使ったって構わないんですよ、反道徳的なもの以外は。要は、誰からいくら貰って何に遣ったかが全部オープンになっていればいい。国民がそれを見て判断すればいいんです。一番いいのは、面倒くさいけれど1円単位で公開することです。


――20年前に政治改革の旗を振られた時から、その主張は一貫していますね。


小沢 行政も、企業も、全部オープンにすべきです。多分、官庁の機密事項なんて、大臣にも報告していないから、上っ面の決まりきったことしか大臣は知らないですよ。

それは大企業の社長だって同じようなものだけれど、結局、一般国民は行政の中身が全くわからない。大企業も株主であれ、誰であれ、全然中身がわからない。クローズドの社会なんです、日本は。アメリカほどやれとは言わないけれども、少なくともヨーロッパぐらいのオープンな社会にしたほうがいいと僕は思います。


―― いわゆる「政治とカネ」問題に関して、民主党の全ての議員、なかんずく国会議員の責任は重大だと思う。ネット市民は自ら調べて「小沢さんは悪いことをしていない」と判断しているのに、民主党議員たちは完全に後れをとっている。自分たちの代表が疑惑の渦中に落ちた。次は政権の要である幹事長がやられた。こういうことが何故起きたのか、事実はどうなのか、自分の目で納得するまで調査し、その結果を自ら有権者に説明し、理解を求める義務と責任があるはずだ。


報道を鵜呑みにし、それに乗っかったほうが楽でいいと考え、大メディアの後ろから石を投げる。これは、政権党の国民に対する責任放棄、裏切りではないか。


小沢 そのとおりだと思いますけれど、大きなメディアに反論する基盤が出来ていないんですよ。新聞、テレビに何か不利なことを報道されたら、普通の政治家は一発で参ってしまう。僕はもう何十年もやられて、慣れているけれどね。でも、変な言い方だけれど、僕だから、僕の地元の皆も信じてくれて負けずにいられるが、他の人だったら直ぐ落選しちゃいます。


――そうでしょうね。


小沢 そういう意味で、最終的には国民の責任なんだ、と僕は言うんです。本当にいいと思うんだったら、徹底的に支持しなきゃ駄目だと、そして、あなたたちの代表をつくっていくべきと。基盤が出来れば、政治家は何も恐れずに発言出来る。国民のサイドがそうしないと、民主主義は成り立たないと思います。


――あなたから献金をもらった、支援を受けただけでいけないとの報道もあった。


小沢 うーん・・・・。あれ(献金を集めるだけで)もいけないんだから、どうなっているんだろうね。

だけど、政治活動には金がかかるんです。1万人に葉書を出すのにいくらかかるの?出さなければ(有権者に)国会報告の手紙一つよこさないと批判されるに決まっている。皆、それをなかなか言い切れないから、僕が憎まれても言ってるんですよ。たまたま僕が他の人よりは資金が集まるから、それで支援してるだけのこと。どこに批判の根拠がありますか。


――ある新聞は、「他の党は裏金でやることを、小沢は表に書いた」とか、不思議な報道もあった。


小沢 表でやったのがけしからんって言うんだ(笑い)。




【「小沢抜き大連立」は出来ない】


――2000 年に、自自連立からあなた(自由党)は離脱した。≪≪連立合意時の状況は、国内では有珠山(うすざん)の噴火、海外では米英のイラク空爆や韓国軍による北朝鮮艦艇の撃沈と、内外の緊迫の中で自民党が行き詰まっていた。そこで小沢政策を丸呑みして、非常時に応える連立が出来た。だが、危機が去ると、自民党はあくまで政策合意の実現を迫るあなたが疎ましくなり、小沢排除の動きが起きたというのが実態だったと思う。その時の小沢排除によって、その後に「小泉路線」が生まれ、自衛隊の海外派遣までやった。国内では市場原理主義を暴走させて格差が拡大された。それを立て直そうと訴えて、民主党による政権交代が実現したという流れです。


つまり、過去10年間の大きな変化と困難は、実は小沢排除によって齎されたと言える。だから、今の小沢排除の結末も、逆戻りの危険を予感させる。≫≫菅総理自民党公明党に秋波を送り(しゅうはをおくる、色目を使う、媚を売るの意)、何とか政権を維持しようとするのは、つまりは旧勢力との関係の深みにはまり、改革の流れを止めることになる。


小沢 僕個人を排除するのは一向に構わない。国民に掲げた大義と理想を実行する為に、「俺たちがやるから小沢は要らない」とうのならそれでいいの。だけど、そうじゃなくて、現実の壁にぶつかって何も出来ないから、小沢排除を唱えてさえいれば、新聞、テレビが支持してくれるというのでは、それは筋違いというか、本末転倒というか、国民の期待に応える政権ではない、ということになる。


――小沢抜きの大連立なんて聞くと不愉快でしょう。


小沢 (苦笑して)それは、そう簡単には出来ないですよ。


――今の政界の中枢を見ると、この大連立構想は、「自社さ政権」の再結集ではないのか。


小沢 ああ、「自・社・さ」ね。だけど、自民党もごちゃごちゃだね。どこもごちゃごちゃになったら日本も国民も本当に困っちゃう(笑い)。


――ちょうど自自連立が出来た時のように、今、小沢排除の一方で、北のロシア、南の中国、西の朝鮮半島、それから沖縄問題ではアメリカとの間に大きな問題を抱えている。


小沢 自自連立の時には金融危機もあったんですね。だけど、今はあの時よりも政治的には深刻だと思いますよ。それから経済だって、一瞬収まったように見えているけれども、底辺ではそうではないと思いますね。だから、国民は政権を代える決断をしたんですよ、本能的にね。


<以下次号>

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う〜ん、次号がたのしみですね。


報道メディアに反論する基盤ができていない、という指摘、ほんとうにそのとおりです。
「そういう意味で、最終的には国民の責任なんだ、と僕は言うんです。本当にいいと思うんだったら、徹底的に支持しなきゃ駄目だと、そして、あなたたちの代表をつくっていくべきと。基盤が出来れば、政治家は何も恐れずに発言出来る。国民のサイドがそうしないと、民主主義は成り立たないと思います。」という言葉は貴重です。


本当にいいと思うのだったら、徹底的に支持しなければいけない。そうすれば、代弁者としての政治家も、勇気がわく。発言力もつく。容易には屈服しない。


代弁者としての政治家を勇気づける。注視しつづける。それをするのは国民であり、それが民主主義というものだ。


・・・・・こういう言葉、いいですねー。政治家としてのふるまいの基本倫理が崩壊してしまっている一部民主党議員は、何を言っても耳に入らないでしょうが、こころある議員、そして人々は、存在します。かならずしも少数ではない、と信じます。