猫モノガタリ

片目

三歳を過ぎて 片目の野良猫の 世の苦浸(し)みたる風情(ふぜい)に歩く 三歳を過ぎて片目の野良猫の世の苦浸みたる風情に歩く 歌集『巌のちから』 この子に会いに行かなくなってから、もう二年か三年経ちます。植木にじゃれついたり、くるくる走りまわった…

痴愚神

わが脛(はぎ)に つむりを載せて 鼾(いびき)する 痴愚神(ちぐしん)ひとり テーブルの下 わが脛につむりを載せて鼾する痴愚神ひとりテーブルの下 歌集『巌のちから』より

猫一首

テーブルの下なる猫に足の裏あてつつ昼の時傾きぬ 素足がこころよい五月も、ときにうすらつめたい日がある。テーブルのしたに丸くなって眠り惚けている猫の、ふくふくした腹のあたりに無遠慮に足をつっこんだり、背中のがわから足のつま先を押し入れたりしな…