三歳を過ぎて
片目の野良猫の
世の苦浸(し)みたる風情(ふぜい)に歩く
三歳を過ぎて片目の野良猫の世の苦浸みたる風情に歩く
歌集『巌のちから』
この子に会いに行かなくなってから、もう二年か三年経ちます。植木にじゃれついたり、くるくる走りまわったり、心のうち晴れるような無邪気な日々を遊んでいたのは、もう十年以上も前のこと。歳を考えると、あそこにはもういないのではないかと、それを知るのがつらくて胸が痛くて、行くのがこわい。どうしているかと思いながら、日が経てば経つほど、そちらに足を向けることができません。