短歌のページ・雨後五首

 
       雨 後

                                         阿木津 英





にんげんに善きもののなほ遺(のこ)されてわが渡りゆく千年の雲





来て止まる雀か何か冬木木のひかりのあめの繊きこずゑに





       ダンテ『神曲』地獄篇
名聞(みやうもん)は一吹きの風こちらからあちらから吹き名もまた変はる





五つ六つ鴨どり浮かび鷺白く立ちたり雨後のあかるむ川に





ゆたけくも余る粒実に満ち足らひ喉声ながるこずゑのうへに






                                       
                           毎日新聞」2009.5.11付