第88回コンプライアンス研究センター定例記者レクでの発言概要・・・・郷原信郎氏

昨日、六本木でひらかれた郷原信郎氏の定例記者レクチャーの内容です。


コンプライアンス教育・リスクマネジメントコンサルティングを業務とする会社http://www.comp-c.co.jp/がある
そうで、そこでの発言になります。
郷原氏の発言は、PDFによると、名城大学コンプライアンス研究センター長としての肩書によるものです。


ネットがあってもアクセスしない方、新聞・テレビの記事しか読まない方、どうかこのようなすっきりとした、
理の通った発言を知ってください。
以下にポイントのみ抄出します。



第88回定例記者レク概要


○昨日、陸山会の不動産取得に関連する政治資金規正法違反についての、小沢一郎氏に対する不起訴処分
について、東京第5検察審査会で起訴相当という議決が出ました。よく議決書を読んでみると、とんでも
ない議決です。
驚いたというか、あぜんとしたというのが正直なところです。


○ところが今回はそれについては全然触れていないで、客観的には確かに時期がズレているから虚偽と
言えば言えるだろうという支出の時期のズレ、不動産の取得の時期のズレ、ここだけを起訴すべきだ
という議決です。
これは、いくら何でも政治資金規正法の趣旨目的から考えて、これだけの事実で起訴すべきだと言わ
れても、到底起訴はできないと思いますし、検察の不起訴の結論は変わらないと思います。
再捜査をしたところで新たな証拠が見つかる可能性はほとんどないわけです。


○となると、今回の起訴相当の議決はあっても、再捜査の結果、再び不起訴になる可能性が極めて強い。
そうすると、今度もう一回検察審査会に行くわけです、(略)それでも検察審査会の素人的な判断はまた
起訴だという判断になる可能性も相当程度あります。
そうなると、今度は起訴強制ということで、指定代理人が選任されて、指定代理人が起訴の手続を取る
ことになります。
これは私の立場から言うのもなんですが、検察にとって大変な事態です。とりわけ特捜部という組織
にとっては非常にやっかいな事態、困り果てる事態になると思います。


○もし起訴強制ということになれば、恐らく関連する証拠は全部指定代理人に提供しなければいけな
いということになると思います。関連する証拠ということになると、去年の3月の西松建設事件の
ときの押収した資料から何から全てということになります。いろいろな取り調べの結果、得られた
供述調書とか、そういったものも、公判に提出する必要がないと考えられるものも全部、指定代理
人に渡さなければいけない。

(←特捜部が見せたくないもの、見せられない内幕、すべてが外に出ることになる。かといって、
審査会にしたがって起訴すれば、自分たちの「不起訴」の結論は何だったのかという不名誉、
検察特捜部の存在理由否定になる)


○それからもう1つ、今回の検察審査会の議決書を見て問題だと思うのは、審査申し立て人が甲と
なっていて、匿名だということです。なぜ審査申し立て人の名前を記載しないのか。これはまったく
理解できないです。
これだけの大きな影響が生じる事件の審査を申し立てている人間ですから、自分の名前ぐらい出すのは
当たり前だと思います。
申立人本人が匿名を仮に希望したとしても、そんな希望は絶対受け入れるべきではないし、最初から
それ前提の審査申立であれば、そんなものは受け付けるべきではなかったと思います。


○自分たちが小沢というターゲットに焦点を当てて捜査を進めていくことしか頭にない、そのための
手段であれば、現職の国会議員を逮捕するというのはどういう意味なんだとか、それにふさわしい
だけの事実、証拠はあるのかなどほとんど考えないで前のめりに、前のめりに捜査してきたことが、
結果的には世の中にいろいろな誤った印象を与えてしまって、これが検察審査会の起訴強制という
制度の下で、一気に今度、検察の方にそのとがめが跳ね返ってきてしまった。
それが今回の問題だと思います。


○私に言わせれば、現職の国会議員の石川氏の逮捕・起訴に重大な問題があるのであって、小沢氏の
方は箸にも棒にもかからないです。
そこをはっきり言わないから、結局、検審の審査員にも誤った認識を与えてしまう。なぜ言えな
いかというと、それは捜査が最初から無茶苦茶だからです。起訴を目指して捜査すること自体が
暴走なのに、それをそうだったとは言えないので、世の中に誤解を与える。


○結局は、元を正せば西松建設事件で大久保秘書を逮捕したところにすべての原因があるわけです。


○ところが、今回は、検察が、特捜部が、がんがん無理な捜査をしていって、それがさすがにもうそれ
以上は進めないというところまで行って力尽きた。それを「市民感覚」を追い風にもう一回暴走させる
方向に向けて検察審査会の起訴強制という制度が使われようとしているわけです。それは、起訴強制
という制度の本来の趣旨にまったく反するものだと思います。


○本当にこんなことをやっていたら検察はおしまいじゃないかと。すごく私は心配しています。