鳩山政権から菅政権へ・・・その移行の背後にあるもの

政治の内幕は奇奇怪怪、魑魅魍魎の世界だと、つくづく思います。
政局にひきずり回されず、マスコミの意図ある報道に洗脳されず、現象の本質を把握
しておかなければなりません。


佐藤優氏の鳩山と小沢の間にある緊張についての分析、解説、これがいちばん胸に落
ちます。
昨日以来、twitterなどでも紹介されていますが、今朝方、ブログ「すみっち通信」が
これについて、沖縄の立場からのコメントを書いています。
また、佐藤優氏の分析の方向については、副島隆彦氏も賛同を示しており、世界視点
から見ても、妥当なものと思われます。


まず、六月二日付けの佐藤優氏の文章を抄出紹介します。
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http://gendai.ismedia.jp/articles/-/643

鳩山総理と小沢幹事長の間を緊張させる官僚の「罠」
       普天間問題を契機に静かなクーデターが始まる




現下政局の焦点は、鳩山由紀夫総理と小沢一郎民主党幹事長の真実の関係がどうな
っているかだ。

(略)

筆者は、これらの情勢論では、問題の本質を理解することができないと考える。



 鳩山総理と小沢幹事長の間には、深刻な認識の相違がある。
筆者なりの表現を用いれば、小沢幹事長は、鳩山総理が「友愛」のベクトルを間違え
た方向に示してしまったと考えているのだ。


 鳩山総理には2つの顔がある。

 第1は、2009年8月30日の衆議院議員選挙(総選挙)で、国民によって選ばれた最大政
党・民主党の代表としての顔だ。社会を代表している側面と言ってもよい。

第2は、霞が関(中央官庁)官僚のトップとしての顔だ。



 官僚は、国家公務員試験や司法試験のような難解な試験に合格したエリートが国家
を支配すべきと考えている。彼らは、露骨に威張り散らさずに表面は温厚な顔をして
いても、内心では、国民を無知蒙昧な有象無象と見下している。

 そして、国民によって選挙された国会議員は有象無象のエキスのようなもので、こん
な奴らの言うことを聞く必要などサラサラないと思っている。

 もっともこの有象無象の国民から取り立てる税金で官僚は生活しているので、国会
議員の言うことも少しは聞かなくてはならないというくらいのバランス感覚をもって
いる。自民党政権時代は、「名目的権力は政治家、実質的権力は官僚」という不文律
が存在していた。それを鳩山由紀夫総理と小沢一郎幹事長は本気で崩そうとしている。


(略)


 鳩山総理が、沖縄県民の切実な声を真摯に受け止め、米海兵隊普天間飛行場の移設
先について「最低でも(沖縄)県外」という主張を総選挙前にも、総選挙中にも、そして
総選挙後も続けた。5月28日に、辺野古への移設を明示した閣議了解を採択した後も、
鳩山総理は、将来的に、米海兵隊を沖縄の外に移動することを考えているのだと思う。


 これに対して、官僚は、自民党政権時代の日米合意で定められた辺野古案にもどす
ことが死活的に重要と考えた。それは抑止力を維持するためではない。

 政権交代が起きても、外務官僚と防衛官僚が組み立てた辺野古案がもっともよいとい
う結果になれば、日本国家を支配するのが官僚であるということが、国内においてのみ
ならず、米国政府に対しても示すことができる。
普天間問題は、官僚にとって、「日本国家の支配者がわれわれである」ということを示
す象徴的事案なのだ。




 内閣総理大臣という1人の人間の中に、国民を代表する要素と官僚を代表する要素が
「区別されつつも分離されずに」混在している。普天間問題について、この2つの要素が
軋轢を強めた。こうして、鳩山総理の中で自己同一性(アイデンティティー)の危機が生
じた。


 1月末の名護市長選挙で、辺野古への受け入れに反対する稲嶺進氏が当選した。これで
鳩山総理は、沖縄県外に向けて、舵を切ろうとした。ここで大きな与件の変化が生じた。

 沖縄1区選出の下地幹郎衆議院議員(国民新党)が、沖縄県内への受入を主張したからだ。
この機会を外務官僚、防衛官僚は最大限に活用した。官僚は、下地氏が沖縄の「声なき
声」を代表しているという印象操作と情報操作を行い、官邸の官僚、閣僚たちに「辺野古
への回帰以外にない」という雰囲気を醸成していった。


(略)


6月1日現在、下地氏は衆議院議員を辞職していない。5月28日の日米合意と閣議了解で問
題が解決したと下地氏が認識しているからであろうか? 5月末までに普天間問題が解決し
ない場合、鳩山総理が辞任するのではなく、下地氏が議員辞職するのではなかったのだろ
うか? 

「沖縄選出の国会議員として、六月の一日には衆議院をやめますよ、私は」と述べたのは、
単なる言葉のアヤで真剣な発言ではなかったということか? 下地氏には、国民、第一義
的に沖縄1区の有権者と、匕首を突きつけた相手である鳩山総理に釈明する義務がある。


 2月の下地発言後、鳩山総理の心の中で、沖縄にも県内移設を容認する可能性があると
いう認識が強まった。




 普天間問題について、小沢幹事長は、沖縄県内への移設の可能性は、非現実的と考えて
いる。それは地元の抵抗が激しいからだ。そして、普天間問題を官僚並びに無意識のうち
に官僚と同じ目線になっているマスメディアが政局の焦点にしようとすることに対して、
小沢幹事長は危機意識を感じていた。



 筆者が得ている情報では、日米合意、閣議了解の内容について、小沢幹事長は事前に
総理官邸、外務省、防衛省から何の説明も受けていない。鳩山総理もこの問題について、
小沢幹事長の助言を求めていない。



 小沢幹事長からすると、鳩山総理は、沖縄県民に対して向けるべき「友愛」を、官僚
に対して向けてしまったのである。官僚は個人的には、決して悪人ではない。

(略)

小沢幹事長は、このような官僚の熱心さ、忠実さによって、官僚に引き寄せられること
はない。それは、現実に検察官僚と生きるか死ぬかの戦いを展開しているからだ。



 官僚は、現在、2つの戦線を開いている。第1戦線は、検察庁による小沢一郎潰しだ。
第2戦線が外務官僚と防衛官僚による普天間問題の強行着陸だ。
5月に入って外務官僚は、「アメリカの圧力」を巧みに演出しつつ、自民党政権時代に
官僚が定めた辺野古案が最良であることを鳩山総理が認めないならば、政権を潰すという
勝負を賭けた。



 鳩山総理は、現状の力のバランスでは、官僚勢力に譲歩するしかないと判断し、レト
リックはともかく、辺野古案に回帰した。前に述べたように、鳩山総理の認識では、こ
れは暫定的回答で、段階的に沖縄の負担を軽減し、将来的な沖縄県外もしくは日本国外
への模索を実現しようとしているのであろう。



 しかし、この状況を官僚は「国家の主導権を官僚に取り戻した象徴的事案」と受けと
めている。



 小沢幹事長は、この象徴的意味を十分に理解している。普天間を突破口に、官僚によ
る静かなクーデターが始まった。このままだと民主党連立政権が政治生命を喪失し、主
導権を官僚に握られる危険がある。



 鳩山総理にとっては、戦術的妥協に過ぎない今回の普天間問題の処理を、小沢幹事長
戦略的瑕疵で、このままでは権力が官僚に奪取されると危機感を強めている。



 このような現状認識の相違が鳩山総理と小沢幹事長の間をかつてなく緊張させている
のだと筆者は見ている。「友愛」のベクトルを再び国民に向けることで、態勢を立て直す
ことを小沢幹事長は考えているのだと筆者は見ている。

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つぎに、六月四日付けプログ「すみっち通信」から、沖縄の視点をよくあらわしていると
ころを中心に紹介します。
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http://sumichi7878.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-a780.html
小沢一郎幹事長、あたなも辞めてください」という鳩山発言をめぐり、「あれは小沢一郎
との刺し違い、道ずれだ」というメディア論について、副島隆彦氏はご自身が主宰する学問
道場【言論系のネット革命】の6月4日付の記事で「鳩山・小沢体制を破壊しようとする日
本のオール官僚たちのクーデターの悪だくみが実現しつつある」と指摘し、今は決戦主義を
とらずに敵が敷いた包囲網の外側へ逃げることが重要だ、と説いている。

同氏が指す「敵」とは、米国の声を代弁する政治家や官僚たちで、次期首相の菅直人氏につ
いて副島氏は、「増税(消費税の値上げ)を言うことで、財務省アメリカの言う事をよく
きく人間になった。それで愛国者亀井静香大臣とケンカになった人間だ」と切り捨て、
アメリカによる菅直人氏や岡田克也氏までもの取り込みによる日本の国民革命派への包
囲網は、7月11日参院選の結果としての民主党の一定の勝利までは、じっとして甘受すべ
き」と、小沢氏を前面に押し立てて正面突破を図ろうとする作戦は控え、敵の術中に嵌まる
決戦主義の無謀を避けることが今は大事だと訴えている。

(略)

まず佐藤氏は、鳩山氏の辞任の引き金となった普天間問題について、沖縄が「普天間問題
は東京の政治エリート(国会議員・官僚)による沖縄に対する差別を象徴する事案と認識
している。そうした状況を政治エリートたちがしっかり客観的に認識する必要がある」と
指摘。なぜなら、5月28日に発表された日米共同声明で「県内」に決まったようにみえる
普天間問題が厳しい局面を迎えるのは実はこれからだからだという論を展開している。

そのひとつの根拠として、琉球新報の5月29日付けの記事を引用し、県内経済界が「県
内移設の実現は不可能との見方で一致」というかつてない事態を生んでいると指摘。沖縄
の経済界重鎮たちが「変な経済振興策に妥協すると、現在のウチナーンチュが次世代のウ
チナーンチュに批判される。県民のプライド、自尊心、自立にかかわる問題で妥協するわ
けにはいかない(県建設産業団体連合会の呉屋守将会長)」と結束を固めていると強調。
今の沖縄には、「かつてのような『アメとムチの政策』で基地問題を軟着陸させる可能性
はない。辺野古への基地建設を強行すれば、反対派の住民が座り込みをする。それを強制
排除すれば負傷者が出る。そうなると基地反対派だけでなく、保守派を含め、沖縄のマグ
マが噴き出す。そして、日本の国家統合が危機に瀕する」と厳しい先行きを示唆している
のである。


ちなみに琉球新報の記事中で取り上げられている沖縄県内経済界人たちの発言がどういう
ものかというと、


●「反基地運動は今まで以上に激しくなる。嘉手納基地の返還運動にまで発展する可能性
を米国も恐れているはずだ。以前は北部の土建業者のメリットになるとして工法の話も出
たが、今度はどんな工法であっても受け入れとはならない」 (県商工会議所連合会の国
場幸一会長) 

●「9万人が集まった県民大会や名護市長や関係市町村長の反対でも県民の意思は明らか。
翻すことは厳しい。日米両政府の進めるこの計画はお先真っ暗だと思う」(沖縄観光コン
ベンションビューローの平良哲会長)

●「基地に依存して飯を食おうとは思っていない。沖縄は基地依存、財政依存を経て自立
経済を考える時期だ。基地建設は一時的には潤うかもしれないが長期的には生産性を落と
す」(知念栄治県経営者協会長)


というもので、トップに立つ人間たちの不退転の覚悟が伺える。


(略)


ここで佐藤氏がいわんとしていることは、政局が流動している原因は社民党の連立離脱な
どではなく、「国家権力内部の激しい権力闘争」によるものだということだ。

鳩山首相の辞任について佐藤氏は、「官僚に譲歩しすぎために辞任へと追い込まれた」と
し、「自民党政権時代は『名目的権力は国会議員、実質的権力は官僚』という実質的な棲
み分けができていたのを、民主党連立政権は本気になって破壊し、政治主導を実現しよう
としている事態に官僚が深刻な危機意識を抱いている」と指摘。


検察庁による小沢一郎潰し、そして外務官僚と防衛官僚による普天間問題の強行着陸で、
外務官僚は「アメリカの圧力」を巧みに演出しつつ、自民党政権時代に官僚が決めた辺野
古案をよしとしない鳩山政権を潰すという勝負に出たものだと説明している。 

続けて「鳩山総理は、現状の力のバランスでは官僚勢力に譲歩するしかないと判断し、
辺野古案に回帰したが、鳩山総理の認識では、これは暫定的回答で、鳩山氏は段階的に
沖縄の負担を軽減し、将来的な沖縄県外もしくは日本国外への模索を実現しようとして
いる」とも説いている。

(略)




基地を抱える沖縄県民は、常に米国とそれに追従する日本政府に押さえつけられてきたか
ら、そうした構図や本質を肌で体感してきたが、普天間問題が全国区になったことで、そ
うした認識がやっと日本全土にも広がったということなんだろう。



辺野古の海を守ろうとする活動家は排除できたとしても、沖縄県民を排除することは不可
能だ。たとえ首相が辞任したとしても、すでに火が注がれてしまった沖縄のマグマはそう
簡単に消えるものではない。沖縄の経済界トップには、目先の利権に惑わされることなく、
先祖から引き継いだ美しい島を次世代のために必ず守る、という沖縄県民としての誇りを
絶対に失わないでほしい。
利権のための妥協という選択肢を捨てたとき、沖縄は初めて真の自立への道を歩み始めら
れるのだと思うし、ひいては日本の米国から自立にもつながるものだと思う。

分断される日本で、既成権力と戦う小沢一郎が「平成の悪党」となる日は果たして来るの
かどうか。

「小沢革命政権で日本を救え 日本の主人は官僚ではない(仮題)」という副島氏と佐藤
氏の本も楽しみだが、今、私たちがしなければならないことは、参院選に向けて、メディア
にかく乱されることなく政治家一人のスタンスというものを自分の目でしっかり見極める。
そして「主権在民」という意思を国政に反映してくれる政治家を自分の判断力で選ぶことだ。


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