親米反中vs反米親中の冷戦型思考が、日本を米中の谷間に沈没させる・・・・経済学者金子勝ブログより

金子勝氏といえば、小泉竹中改革のとき、その経済政策の間違いを鋭く否定していたのが記憶に
のこります。


以下、要約抄出です。
http://blog.livedoor.jp/kaneko_masaru/archives/1273395.html
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(略)

菅首相も、ただ単に財源が足りないから税制改革を、と言っているだけではダメです。たとえば、
普天間問題は財源とはさしあたり関係がなかったのですから。


一方、メディアは、普天間基地問題でもただ鳩山首相の発言がぶれていると攻撃するだけで、じゃ
あ、一体どうしたらいいのとは一言も言いません。
それを言えば、本土メディアの本音が、沖縄県民を犠牲にする差別的「主張」であることが、誰の
目にも明らかになってしまうからです。
そもそもイラク戦争を煽って何も反省していないメディアですから、鳩山首相の発言のブレを批判
する資格などないのですね。
インチキなものは徐々に見られなくなり、買われなくなっていくのは当然です。
番組制作者は、AKB48やオバカタレントを出せば、若者の視聴率を稼げるくらいにしか考えていな
いんですね。あ〜あ、です。



日本のメディアが本当にだらしがないのは、誰も米国民主党政権鳩山内閣を潰したという事実に
全くふれようとしないことです。
そしてイラク戦争にコミットして失敗した外務官僚や防衛官僚が鳩山を潰しにかかったのです。
これは、明らかに民主党政権の「政治主導」の敗北なのです。


この点を問題にしないのは、「右」も「左」も同じです。
「右」の多くは米国の奴隷なので、そして「左」はリベラルなオバマなので、批判しないのでし
ょう。そして起きたのは、鳩山首相の発言のブレを叩く大合唱でした。


これまで、民主党は中国重視で日本軽視であると言われてきました。クリントン政権時代には、
日本にさまざまな経済的要求を突きつけてきました。
オバマ政権も中国重視、日本軽視であることは疑いありません。
それは、オバマ政権が任命した中国大使と日本大使の「格」を比べれば、わかっていたことです。


しかも、このブログでも書いたように、オバマ大統領は、できるだけウィングを広げて支持を
取り付けようとして、チェンジに失敗しています。
ウォール街の親玉=ルービンの人脈であるガイトナー財務長官、サマーズ国家経済会議議長を
登用したために、金融危機の処理を誤り、チェンジに失敗して、経済危機を長引かせてしまい
ました。
同じように、ブッシュ政権からゲーツ国防長官を引き継いだために、イラク戦争の失敗の総括
も中途半端に終わってしまったのです。
結局、そのツケを同盟国の日本に負わせた形といってよいでしょう。いまのオバマ政権は、
ポチの日本を対中国交渉の「札」の一つくらいとしてしか考えていないのかもしれません。



厳しく批判されるべき鳩山前首相(とその周囲)の間違いは、この状況を甘く見たことにあり
ます。
結局、鳩山前首相は、普天間基地移設問題において辺野古案に戻る際に、これまでの自公政権
の立場を継承して中国を敵国としてその「抑止力」として沖縄の海兵隊基地の必要性を表明し
ました。辞任演説を聞いているかぎりでは、不本意にそうせざるをえなかったことがにじみ出
ています。しかし、問題の厳しさは最初から分かっていたはずなのに、「トラスト・ミー」は
なかったでしょう。



鳩山前首相がいかに宇宙人でも、こうした政策「転換」が、「対等な日米関係」や「東アジア
共同体」構想と矛盾することくらいは分かっているはずです。
鳩山前首相は、就任直後、「東アジア共同体」構想のさきがけとして尖閣列島のガス田共同開
発を打ち出しましたが、5月30日から3日間にわたる温家宝首相の日本訪問で、その条約締結の
交渉を始めることが決まりました。それが鳩山首相の最後の仕事であったとは、本当に皮肉な
結末でした。



いま重要なのは、親米か反米かとか、親中か反中か、といった冷戦型オヤジ思考からいかにし
て脱却するかです。世界情勢は大きく変化しています。


何より、イラク戦争の失敗と世界金融危機で米国の影響力が落ちていく一方で、中国のプレゼ
ンスが高まっています。
しかも、米中経済には切っても切れないくらい相互依存関係が生まれていることです。


(略)


かつての冷戦時代と決定的に異なる点は、米中経済の相互依存が決定的に深まっており、
双方が軍事的外交的に衝突することは、両国の経済に決定的に打撃を与えるようになって
います。
中国・台湾間でも朝鮮半島でも軍事的紛争があれば、経済的打撃は計り知れません。
やや挑発的な言い方をすれば、中国共産党はもはや労働者と農民の党ではなく、経済成長
で都市中間層が支えている政党になっているのです。
世界の政治と経済は、冷戦時代と大きく違ってきています。そして、オヤジたちはこの変
化についていけないのです。



では、日本にとって中国はどのような経済的位置にあるのでしょうか。
現在、日本経済は景気対策の一時的効果と、中国、ASEAN諸国への輸出でどうにか持ちこた
えています。


まず、2010年4月における日本の輸出総額(速報値)は約5兆8900億円で、リーマンショック
の半年後であった前年4月と比べると、40%の伸びでした。
そのうち中国向け輸出額の占める割合は20%弱、アジア諸国全体の割合は約56%にまで達し
ています。これに対して、対北米(米国とカナダ)輸出額は約16%にまで落ちています。
いまや世界経済の成長センターになりつつある中国との関係抜きに、日本経済が成り立たな
くなっているのです。



もはや冷戦時代のように米国についていけば何とかなるという時代ではなくなっているのです。
むしろ中国市場あるいはASEAN諸国の市場にもっと積極的に食い込んでいかないと、将来日本
が生きていけなくなる危険性があります。年金もそうですが、オヤジ世代が選択を誤って被害
を受けるのは、いつも若い世代です。


(略)


もう一つの盲点は、中国を遅れた国と見なすオヤジ思考です。
中国は有人宇宙飛行を含む先端技術開発プロジェクトに巨額の資金を戦略的に投じています。
環境エネルギー革命でも、資源を買いあさる一方で、2020年までに再生可能エネルギーの割
合を23%まで高める目標を立て、太陽光発電風力発電をものすごい勢いで普及させ、電気
自動車の開発も進めています。
これまで石炭・石油を基盤とする産業革命アングロサクソンが担ってきましたが、中国が
第3次産業革命を担おうとしているのです。


日本もそうでしたが、キャッチアップする方が、スピードが速くて有利です。サンクス・コ
ストがかからないからです。「新自由主義」の破産の後に来たのが「国家資本主義」の隆盛
――これとどう向き合っていくのか。日本は、競争相手として中国と真剣に闘っていく構え
がないといけません。


そう考えると、これまでの米国についていけば何とかなる状況はとうに終わっているのです。
リスク要因に備えつつも、戦略的な産業政策をとりながら、いかに中国をはじめアジア諸国
といかに協調関係を築きながら、いかにしてルールやスタンダードをにぎりつつ、その市場
に食い込んでいくかを真剣に考えないといけません。


オヤジの私が言うのも変ですが、食い逃げを図る冷戦型オヤジ思考に毒されてはいけません。
時代が変化する時、主流となっている冷戦型オヤジ思考に、若い世代がプロテストして食い
破っていく「新陳代謝」がなければ、その社会は衰えていくのです。


私のようなオヤジが、いつまでもオヤジ思考に抵抗しているのにはそろそろ無理があります。
教科書を薄めているだけのオヤジ若手でなく、「新陳代謝」をもたらす新しい考え方を持つ
若い人が出てきてほしいものです。


・・・・・・・・引用終わり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



要するに、新自由主義が破綻を迎えたことははっきりしたということです。


金子勝氏は、この新自由主義に抵抗するオヤジでした。
結局、反・新自由主義が先を見通していたわけです。
わたしたちはひどい時代を迎えることになってしまったのです。


その結末が見えて、さらにいま新しい時代を迎えつつあると金子氏は言います。
中国型「国家資本主義」すなわち「政府と企業癒着主義」。


日本がいつまでもポチから脱却できなければ、仲良し日中の挟間で、両方からいたぶられ
ることになる・・・