TPPの報道の仕方と、中野剛志氏の解説インタビュー
中野剛志氏のyou tubeを先日あげましたが、それに対して斉藤政夫氏より以下のような
コメントをいただきました。
報道のしかた、調べてくださってて、たいへん参考になります。
その部分のみ、ここに再掲させていただきます。
全文は、一月十四日のコメント欄をごらんください。
ついでに、中野氏のビデオをまだの方は、短いものですから、ぜひともごらんください。
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TPPの報道に見る「大手メディアの異常」 斉藤政夫
TPP問題については前にもコメントさせていただきましたが、こんな日本の将来を左右する大事な
問題が大手メディアによってゆがめられて報道されていることを思うと、黙っているわけにはいき
ません。この問題については著名な評論家、金子勝氏(慶応大学教授)や内橋克人氏(経済評論家)
もTPPはおおいに問題あり、と警告しています。そして今回の中野剛志氏の「TPP解説」は言われる
とおりです。どの方々もTPPの問題点をはっきりと述べています。だが、こうした声は大手メディア
によって報道されることはありません。なぜなら、大手メディアはTPPへの参加を奨励しているから
です。
そこで、メディアの異様な報道風景を見てみたいと思います。管首相の1月4日の年頭会見に対し、
大手新聞各社(5紙)はこれについて社説を掲載しました。その内容はTPPへの参加方針を決めると
した管首相にその実現を迫る内容でした。ちなみに、各社の見出しを示ますと、こうなっています。
読売(5日付):「指導力を発揮して有限実行を」
朝日(5日付):「本気なら応援しよう」
産経(5日付):「言葉通り実行してみせよ」
日経(7日付):「首相は今度こそ『有言実行』の約束を果たせ」
毎日(8日付):「有言実行しか道はない」
また、その後の菅第2次改造内閣の発足(1月14日)を受け、大手4紙の社説(15日付)は、
TPP参加の実行を迫る社説を掲載しました。
朝日:「海江田万里経済産業相らの起用はTPPを含む経済連携と農業改革のため」
毎日:「TPPに参加して通商国家として成長の基盤を整える」
産経:「日本経済の突破口としてTPP参加が求められている」
読売:「TPPへの参加、日米同盟強化に取り組む体制を整えることだ」
そして、テレビでは5日夜、テレビ朝日に管首相が出席。キャスターの古舘伊知郎氏がTPP
参加を表明する首相に「痛みを伴う改革をやってでも会社法人化して農業を活性化し、大規
模化する覚悟は?」と、それを後押しました。
嗚呼、なんたることか。私たちが事実を知ることができるのは、メディアを通してでしかないのです。
(以下略)
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その中野剛志氏の談話が、The journalに掲載されています。
たいへん気持ちのよい、歯切れのよい発言です。
長いインタビューなので、ビデオと重なる部分などは、省略します。
全文はリンク先へ。
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http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/01/tpp_5.html
中野剛志:TPPはトロイの木馬──関税自主権を失った日本は内側から滅びる
中野剛志氏(京都大学大学院助教)
TPP問題はひとつのテストだと思います。冷戦崩壊から20年が経ち、世界情勢が変わりました。
中国・ロシアが台頭し、領土問題などキナ臭くなっています。米国はリーマンショック以降、
消費・輸入で世界経済をひっぱることができなくなり、輸出拡大戦略に転じています。世界不況
でEUもガタがきていて、どの国も世界の需要をとりにいこうとしています。1929年以降の世界恐慌
と同様に危機の時代になるとどの国も利己的になり、とりわけ先進国は世論の支持が必要なので
雇用を守るために必死になります。
このような厳しい時代には、日本のような国にもいろいろな仕掛けが講じられるでしょう。
その世界の動きの中で日本人が相手の戦略をどう読み、どう動けるかが重要になります。
尖閣、北方領土、そしてTPPがきました。このTPP問題をどう議論するか、日本の戦略性が問われて
いたのですが、ロクに議論もせずあっという間に賛成で大勢が決してしまいました。
─TPPの問題点は
昨年10月1日の総理所信表明演説の前までTPPなんて誰も聞いたことがありませんでした。それにも
関わらず政府が11月のAPECの成果にしようと約1ヶ月間の拙速に進めたことは、戦略性の観点だけ
でなく、民主主義の観点からも異常でした。その異常性にすら気づかず、朝日新聞から産経新聞、
右から左まで一色に染まっていたことは非常に危険な状態です。
TPPの議論はメチャクチャです。経団連会長は「TPPに参加しないと世界の孤児になる」と言って
いますが、そもそも日本は本当に鎖国しているのでしょうか。
日本はWTO加盟国でAPECもあり、11の国や地域とFTAを結び、平均関税率は米国や欧州、もちろん
韓国よりも低い部類に入ります。これでどうして世界の孤児になるのでしょうか。ではTPPに入る
気がない韓国は世界の孤児なのでしょうか。
(略)
TPPは"徹底的にパッパラパー"の略かと思えるぐらい議論がメチャクチャです。
─菅首相は10月当初、TPPをAPECの一つの成果とするべく横浜の地で「開国する」と叫びました
横浜で開国を宣言した菅首相はウィットに富んでいるなと思いました。
横浜が幕末に開港したのは日米修好通商条約で、これは治外法権と関税自主権の放棄が記された不平等
条約です。その後日本は苦難の道を歩み、日清戦争、日露戦争を戦ってようやく1911年に関税自主権を
回復して一流国になりました。中国漁船の船長を解放したのは、日本の法律で外国人を裁けないという
治外法権を指します。次にTPPで関税自主権を放棄するつもりであることを各国首脳の前で宣言したのです。
APECでは各国首脳の前で「世界の孤児になる」「鎖国している」と不当に自虐的に自国のイメージをおと
しめました。各国は日本が閉鎖的な国だと思うか、思ったフリをするため、普通は自国の開かれたイメージ
を大切にするものです。開国すると言って得意になっているようですが、外交戦略の初歩も知らないのかなと。
すでに戦略的に負けています。
世界中が飢餓状態にある今、世界最大の金融資産国である日本を鵜の目鷹の目で狙っています。
太ったカモがネギを背負って環太平洋をまわっているわけで、椿三十郎の台詞にあるように「危なっかしくて
見てらんねえ」状態です。
─TPPは実質、日米の自由貿易協定(FTA)とおっしゃいましたが、米国への輸出が拡大することは
考えられませんか
残念ながら無理です。米国は貿易赤字を減らすことを国家経済目標にしていて、オバマ大統領は5年間
で輸出を2倍に増やすと言っています。米国は輸出倍増戦略の一環としてTPPを仕掛けており、輸出をす
ることはあっても輸入を増やすつもりはありません。これは米国の陰謀でも何でもないのです。
(略)
─中国と韓国がTPPに参加するという話が一部でありました
中国は米国との間で人民元問題を抱えています。為替操作国として名指しで批判されています。
為替を操作するということは貿易自由化以前の話ですから、中国はおそらく入りません。
韓国はというと、調整交渉の余地がある二国間の米韓FTAを選択しています。なぜTPPではなくFTAを
選んだかというと、TPPの方が過激な自由貿易である上に、加盟国を見ると工業製品輸出国がなく、
農業製品をはじめとする一次産品輸出国、低賃金労働輸出国ばかりです。韓国はTPPに参加しても
利害関係が一致する国がなく、不利になるから米韓FTAを選んでいるのです
日本は米国とFTAすら結べていないのに、もっとハードルが高く不利な条件でTPPという自由貿易を
結ぼうとしています。戦略性の無さが恐ろしいです。
<関税はただのフェイント 世界は通貨戦争>
米国は輸出倍増戦略をするためにドル安を志向しています。世界はグローバル化して企業は立地を
自由に選べるので、輸入関税が邪魔であればその国に立地することもできます。現に日本の自動車
メーカーは米国での新車販売台数の66%が現地生産で、8割の会社もあります。もはや関税は関係あ
りません。それに加えて米国は日本の国際競争力を減らしたり、日本企業の米国での現地生産を増
やしたりする手段としてドル安を志向します。ドル安をやらないと輸出倍増戦略はできません。
日米間で関税を引き下げた後、ドル安に持って行くことで米国は日本企業にまったく雇用を奪われ
ることがなくなります。他方、ドル安で競争力が増した米国の農産品が日本に襲いかかります。
日本の農業は関税が嫌だからといって外国に立地はできず、一網打尽にされるでしょう。
グローバルな世界で関税は自国を守る手段ではありません。通貨なんです。
─関税の考え方をかえる必要がありそうです
米国の関税は自国を守るためのディフェンスではなく、日本の農業関税という固いディフェンスを
突破するためのフェイントです。
彼らはフェイントなどの手段をとれるから日本をTPPに巻き込もうとしているということです。
─農業構造改革を進めれば自由化の影響を乗り越えられるという意見はどう思いますか
みなさんはTPPに入れば製造業は得して農業が損をすると思っているため、農業対策をすればTPPに
入れると思うようになります。農業も効率性を上げればTPPに参加しても米国と競争して生き残れる、
生き残れないのであれば企業努力が足りない、だから農業構造改革を進めよと言われます。
それは根本的に間違いだと思います。関税が100%撤廃されれば日本の農業は勝てません。
関税の下駄がはずれ、米国の大規模生産的農業と戦わざるを得なくなったところでドル安が追い打ち
をかけます。さらに米国は不景気でデフレしかかっており、賃金が下がっていて競争力が増しています。
関税撤廃、大規模農業の効率性、ドル安、賃金下落という4つの要素を乗り越えられる農業構造改革が
思いつく頭脳があるなら、関税があっても韓国に勝てる製造業を考えろと言いたいです。
自由貿易は常に良いものとは限りません。経済が効率化して安い製品が輸入されて消費者が利益を得る
ことは、全員が認めます。しかし安い製品が入ってきて物価が下がることは、デフレの状況においては
不幸なことなのです。デフレというものは経済政策担当者にとって、経済運営上もっともかかっては
いけない病だというのが戦後のコンセンサスです。物価が下がって困っている現状で、安い製品が輸入
されてくるとデフレが加速します。安い製品が増えて物価が下落して影響を受けるのは農業だけではありません。
デフレである日本がデフレによってさらに悪化させられるというのがこのTPP、自由貿易の問題です。
農業構造改革を進めて効率性があがった日には、日本の農家も安い農産物を出荷してしまうことになり、
さらにデフレが悪化します。デフレが問題だということを理解していれば、構造改革を進めればいい
なんて議論は出てきません。
こういう議論をすると「農業はこのままでいいのか」ということを言い出す人がいます。
しかし、デフレの時はデフレの脱却が先なのです。インフレ気味になり、食料の価格が上がるのは嫌なので
農業構造改革をするということはアリだと思います。日本は10年以上もデフレです。デフレを脱却することが
先に来なければ農業構造改革は手をつけられません。
例えばタクシー業界が競争原理といって規制緩和の構造改革をしました。デフレなのに。その結果、供給
過剰でタクシーでは暮らせない人が増えて悲惨なことになりました。今回は同じ事が起ころうとしています。
─TPP参加のメリットを少しだけ...
デメリットは山ほどありますが、メリットはないんです。
米国が輸出を伸ばし日本が輸入を増やして貿易不均衡を直すこと自体は、賛成です。ところが、関税を引き
下げて輸入をすると物価が下がるので、日本はデフレが悪化します。経済が縮小するので、結局輸入は増え
ません。農産品が増えれば米国の農業はハッピーですが、トータルで輸入は増えません。
(略)
今、東アジアが調子が良いのは、資金が流入してバブルになっているからで、本当はヤバイ状況です。
環太平洋の国々は経済不況に陥った米国やEUに代わる輸出先を探しています。日本は世界第2位のGDPがあり、
GDPにおける輸出の比率は2割以下という内需大国です。その日本が内需を拡大して不況を脱し、名目GDP3%程度
の普通の経済成長をしたとすれば、環太平洋の国々は欧米で失った市場の代わりを日本に求めることができる
ので、本当の環太平洋経済連携ができます。これなら、どの国も不幸になりません。
─あえてTPPを推進する狙いをあげれば、TPP事態は損だとしても今後FTAやEPAなど二国間貿易を進めるきっかけ
にしたいということなのでしょうか
それも無理筋ですね。自由貿易を進めている国として韓国をあげ、日本はFTAで韓国に遅れをとっているという
論調があります。しかしFTAは、一つ一つ戦略的に見ていくべきもので、数で勝ち負けを判断すべきではありま
せん。韓国はGDPの5割以上が輸出で得ており、自由貿易を進めなければ生きていけません。韓国人はやる気が
あるとか、外を向いているとかいった精神論ではありません。しかし、自由貿易は格差を拡大するものであり、
それが進んでしまったのが韓国なのです。
韓国がなぜ競争力があがったかのでしょうか。韓国はこの4年間で円に対するウォンの価値が約半分になって
いる。韓国の競争力が増したことはウォン安で十分説明できます。日本がTPPで関税を引き下げてもらったと
しても、韓国のウォンが10%下がれば同じ事ですし、逆にウォンが上がれば関税があっても十分戦えます。
グローバル化の世界は関税じゃなく通貨だということがここでも言えます。なんで全部農業にツケをまわす
んだと言いたいです。とっちにしたって世界不況ですから海外でモノは売れませんよ。
失業率が10%の米国で何を売るんですか。
<TPP議論の女性の反応>
─中野さんがおっしゃるような問題点が出されないままに大マスコミが一斉に推進論を展開し、
有識者も賛成論がほとんどでした
外国から見ればこんなにカモにしやすい相手はいません。環太平洋パートナーシップ、自由貿易、
世界平和など美しいフレーズをつければ日本人はイチコロなんです。
なぜこんなにTPPが盛り上がってしまうのでしょうか。TPPは安全保障のためだという人がいますが、
根本的な間違いです。まずTPPは過激な自由貿易協定に過ぎません。軍事協定とは何の関係もありま
せん。
米国はかつての黒船のように武力をちらつかせたり、TPPに入らなければ日米安全保障条約を破棄
するなどと言ったりしていません。日米同盟には固有の軍事戦略上の意義があり、経済的な利益の
ために利用するためのものではありません。さすがに米国でもTPPで農産物の輸出を増やしたいので、
その見返りに日本を命をかけて守れと自国の軍隊を説得できませんよ。TPPを蹴ったから日本の領土が
危なくなるなんてことはありません。
それにも関わらず日本が勝手にそう思い込んでいるのです。尖閣や北方領土の問題を抱え、軍事力
強化は嫌だなと思っているときにTPPが浮かび上がってきて、まさに「溺れる者は藁をもつかむ」ように
TPPにしがみつきました。でもこれにしがみついたって何の関係もないです。もし米国が日米同盟を重視
していないのであれば、TPPに入ったって日本を守ってくれません。
その中で無理に理屈をつけようとするから、アジアの成長だの農業構造改革だのと後知恵でくっつける
からきわめて苦しくなるのです。TPP参加論は、単なる強迫観念です。
─推進派が根拠にしているのは経産省が算出したデータです(※2)。どこまで信用できるものなのでしょうか
経産省はTPPに入らなければ10兆円損をするというデータを発表しました。その計算方法は、日本がTPPに
入らず、EU、中国とFTAを締結せず、韓国が米国、韓国、EUとFTAを結び発効した場合は10兆円の差が出る
というものです。
なぜ中国とEUを入れているのでしょうか。おそらくTPPに加盟しても本当は経済効果がないことがわかった
からでしょう。反対派の農水省と賛成派の経産省は数の大きさで争っているので、試算自体に水増しがあり
ます。もっと言えば、なぜTPPとFTAが混ざった試算をするのかが疑問です。日本がTPPで韓国がFTAと試算
していることを見れば、韓国がTPPに興味がないことを政府が知っていることがわかります。こんな不自然
な試算を見ていると、TPP参加の理屈をつけるのはさぞかし大変だっただろうなと同情したくなります。
(略)
議論が複雑でやっかいかもしれませんが、せめてGDP比を見て「TPPは日米貿易に過ぎない」とか、
米国が輸出拡大戦略をとろうとして輸入しないようにしているということぐらい知ってもらわない
と、戦略を立てようがありません。推進派の人たちが国を開けとか、外を向けとか言っていますが、
本当に外を向けば、TPPでは何のメリットもないことがわかるんです。
そういう意味では推進派の頭の方が鎖国しています。
この程度の議論は、私みたいな若輩者が言わなくても、偉い先生が言うべきなのに誰も声を上げま
せん、もはや民主主義国家じゃないですよ。
─「反対」はもちろん「わからない」と言いづらい雰囲気がありました
一般の人の方が正常な感覚を持っていたのですが、偉い先生が賛成しているから反対する自信が
なかったんだと思います。それこそ下級武士が目を覚ませということで、それにかけるしかない状況
です。
私は今回のTPPを見ていて女性の反応に驚きました。男どもが開国ごっこ、龍馬ごっこをやっていて、
その安っぽいロマンチシズムのせいで自分たちの大事なものが奪われるかもしれないと不安に思って
いるのでしょうか。
「明治の開国は関税自主権の回復であり今回はそれを放棄しようとしている」と言うと、多くの女性が
まさにその通りと言ってくださいました。女性の方が戦略性というものには敏感なんでしょう。
─日本史を教えている高校教師が「幕末・明治の開国を教えるときは、1911年・小村寿太郎をセットに
して教えるほど関税自主権は基本的で大事なこと」と言いました。関税をゼロにするという話に飛び
ついた政府やマスコミは歴史に何を学んでいるのか疑いたくなります
幕末の開国はペリーが武力で迫ったものですが、今回はそんなことはありません。世界第2位のGDPがあり、
何度も言っているようにすでに開国しています。なぜ自爆しようとするのでしょうか。こんな平成の開国
の歴史を、僕らの子どもや孫にどうやって教えますか。雰囲気で決めるようなこの時代を、将来、歴史の
教科書でどう教えるのですか。
(略)
<迫り来る食糧危機と水不足>
─TPPの問題は家庭の食卓にも迫ってくるわけですね
(略)
このようにして国は外からでなく内側から滅びるんです。カルタゴを始め、歴史上別に滅びなくてもいい
ような国がバカをやって滅んでいきました。日本もそういうサイクルに入ったということかもしれませんね。
欧州では「トロイの木馬」の教訓があります。それは「外国からの贈り物には気をつけよう」という言い伝え
です。外国から贈り物を受け取るときはまず警戒するものですが、日本はTPPという関税障壁を崩すための
「トロイの木馬」を嬉々として受け入れようとしているのです。
<TPP問題の側面にある世代抗争>
(略)
先日朝日新聞社から団塊の世代の方がインタビューに来た時に、彼らの世代の口癖を指摘しま
した。このままでは日本が危ないという話をすると必ず「そんなことでは日本は壊れない」と
いう口癖です。しかし、日本はもうすでに壊れているんです。政界はもちろん、私も含めた官僚、
財界そして知識人は、毎年3万人の自殺者の霊がとりついていると思うぐらいの責任感をもって、
もっと真剣に国の行く末を考えないといけません。
私は1996年に社会人になり、以来、一度も名目GDPの成長を経験していません。私より下の世代は
もっとひどい。この世代は「いい加減にしろ」という気持ちになっているのでしょうけど、へたって
いる上、少子高齢化で上の世代が多すぎて声が出ないんです。でも「最近の若者は元気がない」など
と偉そうに言わせてる場合じゃないんです。
今回は地べたを耕している農家、ドブイタ選挙をやっている政治家、女性、この人たちの「危ない!」
と思った直感を大切にしなければいけません。全体が賛成派の中で黙っていた人、発言の機会さえ与え
られていない人、真剣に生きている人たちに声を上げてもらいたいと思います。
(了)
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う〜ん、ほんとにスッキリする。
こんな若い世代が現れてきていること、うれしいですね。
最後のところに朝日新聞からのインタビューに触れて言っていますが、その抜粋が
世に倦む日日氏のブログに。
この中野剛志氏の発言にたいへん共鳴しています。
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http://critic6.blog63.fc2.com/blog-entry-451.html
中野剛志の爽快な反TPPの一撃 - 議連は、国民戦線はできないか
朝日新聞の1/18の紙面にTPPについての特集(15面)があり、中野剛志の反対論がインタビュー形式
で載っている。この内容が実に素晴らしい。私がブログで言っていることと、ほとんど一言一句同
じ主張が並んでいて驚かされた。マスコミに載った研究者の議論を読んで、ここまで我が意を得た
りと膝を打つのは何年ぶりのことだろう。
中野剛志のTPP反対論はネット上にもあるが、この朝日紙面にコンパクトに整理された発言録が、
最も切れ味が鋭く説得力がある。まさに、待望した本格的な代弁者が救世主の如く颯爽と登場した
感があり、読みながら興奮させられる。引用しよう。
「TPPへの参加など論外です。今でも日本の平均関税率は欧米よりも韓国よりも低い。日本はすでに
十分、開国しています。そもそも『海外に打って出れば、日本製品の競争力が高まる』というのは、
考え方が古い。『安ければいい』という途上国市場でいくら製品を売っても、開発力はつきません。
日本製品に競争力があったのは、消費者の要求水準が極めて高い国内市場で鍛えられてきたからです。
(略)うるさい消費者を相手にしてきたから、日本企業は強くなった。ところがデフレが進み、安さ
ばかりが求められるようになって、国内の『目利き』の消費者が減ってしまった。企業は研究開発を
怠るようになり、ipadのような魅力的な商品を作れなくなった」。
そのとおりだ。正しい指摘だ。そして最も重要で本質的な点だ。よく言ってくれた。引用を続ける。
「日本は2002年から2006年にかけて輸出主導で景気が回復しましたが、それは米国の住宅バブルのお
かげ。しかも一人当たり給料は下がりました。利益は株主と企業に回り、一般国民にはまさに『実感なき
景気回復』でした。欧米でも同じ現象が起きています。『自由貿易が経済を成長させる』という教条主義
にとらわれるのはやめて、現実を見て欲しいのです。
日本は10年以上、デフレに悩んできました。そこからの脱却が最優先課題です。私がTPPに反対する最大の
理由は、いま以上に貿易自由化を進め関税を引き下げると、外国の安い製品が入り、デフレがさらに進ん
でしまうからです。農業が打撃を受けるからだけではありません。TPP交渉に参加する9か国と日本のGDPを
合計すると、日米両国で9割を占めます。TPPは実質的に日米自由貿易協定です。米国は輸出拡大を目指して
ドル安を誘導しているのに加え、米国自身もデフレに落ち込みそうです。そんな国との貿易をさらに自由化
すれば、デフレの日本がさらにデフレを輸入するようなものです。
グローバル化した世界で輸出を増やそうとすることも、デフレを促進します。(略)いまデフレ脱却に
最も必要なのは、輸出ではなく内需を拡大して需要不足を埋めることです。(略)内需拡大に即効性がある
のは、政府が公共投資をすることです。(略)貿易自由化が自動的に経済を成長させるわけではない。国内
経済が成長してはじめて、貿易が拡大するのです」。
結局、インタビュー記事の大半を引用してしまった。これ以上サマライズして紹介することができないほど、
一言一句が凝縮されて肝要な主張が展開されている。これは、中野剛志の発言もさることながら、聞き手と
して記事を纏めた記者の太田啓之(署名)の役割も大きいだろう。デフレに着眼している点も正鵠を射ている。
(以下略)
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デフレ・スパイラルに入ったのは、消費税が3%から5%にあがったとき以後だと、わたしは体感しています。
実際、ものを買わなくなりましたから。
牛丼が280円と先日は街で見かけましたが、どうやってこれで利益を出すのだろうと驚くばかりです。
関税の問題ではなく、いまや世界は通貨戦争だということ、株のNEVADAブログがこんなことを書いていました。
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http://blog.livedoor.jp/nevada_report-investment/archives/3347406.html
大荒れになる?為替・金融市場
為替市場が大荒れになり、一ドル70円台に突入するかも知れません。また豪ドル・ポンドも売られる展開
になり、為替市場は、「格下げ督促相場」になるかも知れませんので、取引に参加されている方、また外貨を
保有している方は、リスク管理に一段の注意を払う必要が出てきます。
専門家の中には一ドル60円突破を指摘する向きも出てきておりますが、ドル暴落という次元ではなく、
円ドル相場を金利及び経済成長率の差で見た場合、一ドル60円台となるものです。
また、一ドル60円台になれば、一ユーロも80円台になり、ポンドは100円になり、豪ドルは50円
以下になり、全ての通貨に対して円は上昇し、輸出企業は日本から逃げ出すと共に、日本国内の雇用を一気
に減らすことになるはずです。
何せ、30万円の給料を取っているサラリーマンであれば、一ドル100円であれば$3,000ですが、
一ドル80円では3700ドルになり、一ドル60円ではなんと$5,000にもなるのです。
世界展開する企業からすれば、日本人の生産性がその分だけ上昇していれば問題はありませんが、そうでない
場合には、日本人に払っている総給与額を為替レートの変動分である40%減らす以外にコストを減らす方法
はありません。
為替レートの変動が日本人の雇用を激減させることになりますが、この点につき、日本政府も企業も全くと
いう程、考えていません。
恐ろしい雇用情勢になる日が近づいてきています。
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英知ある人々はいないわけではないのに、通じない。
おもてに出て活躍できない。腕をふるえない。
みすみす滅びの道に向かってしまう。
昭和初期以来の戦争の時代がまさにこうであったかと、嘆息されます。。。