世界中でひたひたと草の根革命・・・・エジプトの若者からのメッセージ  by TUP-Bulletin速報

現在、メディアはエジプト情勢を以下のように伝えています。
下は、googleネットニュースの国際部門から、AFPBBnews


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http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2784042/6759546#blogbtn
AFPBBnews

【2月1日 AFP】ホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)大統領の退陣を求める反政府デモが続くエジプトで、同国軍は31日、民衆の立場を支持し、民衆に銃を向けることはないとの声明を出した。


 デモ隊は同日、無期限のゼネストを呼びかけ、1日にカイロ(Cairo)で「100万人のデモ行進」を実施すると宣言した。エジプト第2の都市アレクサンドリア(Alexandria)でも100万人規模のデモ行進が予定されている。
なお、デモを妨害するためか、すべての国営鉄道が31日から運休されている。


 国軍は「(デモやストライキは)国民の正当な権利だ。偉大な民衆に対し、当方が武力を行使することは決してない」との声明を発表した。一方、警察は態度を明確にしていない。


 オマル・スレイマンOmar Suleiman)副大統領は31日、テレビ演説を行い、野党勢力との対話を「直ちに」開始する用意があると述べた。


 ムバラク大統領は、事態を受けて内務相、財務相、文化相の交代を含む内閣改造を行った。だがデモ隊は、最大野党・ムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)からの呼びかけもあり、内閣総辞職までデモを続ける意向だ。


 デモ開始からの1週間で、デモ隊と警官隊との衝突による死者は少なくとも125人にのぼっている。(c)AFP/Charles Onians

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一方、産経ニュースでは、以下のように述べて、アメリカ政府が微妙にムバラク切り。

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http://sankei.jp.msn.com/world/news/110201/amr11020110050002-n1.htm
新内閣組閣では不十分と米報道官 元米大使が高官と会談へ
2011.2.1 09:59


1月31日、記者会見するギブズ米大統領報道官(ロイター)

 【ワシントン=犬塚陽介】ギブズ米大統領報道官は31日の記者会見で、エジプトのムバラク大統領による
新内閣の組閣について、国際社会が求めているのは「(閣僚の)任命ではなく、行動だ」と述べ、改革に向けた具体的な一歩としては不十分との認識を示した。


 ただ、ムバラク政権の退陣の必要性に言及することは避け、政権交代は「米国が決めることではない。エジプト国民だ」と繰り返した。

(略)

 クローリー次官補はウィズナー氏の訪問は「私的なもの」としているが、「米国の発言をいっそう強化する機会となる」と語っており、ムバラク政権に退陣を促す可能性もあるとの憶測を呼んでいる。


 エジプト情勢をめぐっては、オバマ大統領やクリントン国務長官が「エジプト国民の強い願望に敏感に反応する政府への秩序だった移行を支持する」と述べており、米国の対応が注目されている。

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さて、そういう情勢の中、わたしが配信を依頼しているメルマガTUP速報より
以下のような、「エジプトの若者からのメッセージ」が翻訳されて届きました。


こんな前書きがついています。
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◎エジプトにてベルリンの壁崩壊の再現なるか
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ニュースでご覧の通り、エジプトで現在、政治の正常化を求める
市民の気運が大きく高まっています。ベルリンの壁が崩壊した時
に似て、現在、私たちは草の根からの革命を目撃しているのかも
知れません。


エジプトでは、約30年前、時の大統領のサーダートが殺され、
非常事態が宣言され、当時、副大統領だったムバーラクが大統領に
なりました。以来今日まで、非常事態宣言は解除されていません。
つまり、非常事態が 30年継続していて、その中で、大統領が自分
に都合のいいように法を作り変えている状態が続いています。
エジプトは、アラブの大義を裏切って、イスラエルと単独和平を
結んだ結果、アラブ連盟から追放されましたが、そんなエジプト、
つまりはムバーラク大統領の独裁制を、アメリカが全面的に援助
してきました。そして、それに反対するエジプト人民の声や運動は
ずっと抑圧、弾圧されてきています。


本速報では「エジプトの一青年」と名乗る匿名の人物によるブログ
への寄稿を邦訳
して紹介します。これは、ブログサイトとして英語
圏で最大手の一つ、blogspot.com に 2011年1月27日に投稿された
もの
です。


同筆者からの投稿は、これ限り、すなわちこの文章を投稿するため
にブログのアカウントを取得して発表したものと見受けられます。
そういう意味では、この投稿者が本当に現地人かどうかを確認する
術はありません。1/27頃以降、エジプトからのインターネット接続
が政府によって禁止された現状ではなおさらのことです。一方、
エジプトでの反政府的な言動への弾圧の歴史を考えると、一市民が
実名でこのような文章を発表するには決死の覚悟が必要なことは
自明ですから、現実問題として匿名投稿になるのはむしろ当然、
ある意味で真実味がある、とも言えます。


このブログ投稿は、世界に静かに広がっているようです。
投稿の内容が真に迫っていて、かつ簡潔ながらよく練られた文章に
なっています。
私ども TUP(有志)の心を打つものがありました。
実際、文章で触れられている基本的な事実関係のうち確認できる
部分は TUP有志で確認して、問題ないことを確かめました。無論、
現地からの声である以上、確認できない部分が多いことはいたし
かたありませんし、だからこそ価値があるとも言えます。

以下、同ブログ投稿を邦訳して、皆さんと共有します。
エジプト市民に近く自由と平安とが訪れることを強く願います。
〔前書: 坂野正明/TUP管理人、邦訳: 山崎久隆/TUP、TUP有志〕
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そう、わたしもこの一青年のエジプトからの便りを読んで、ふと涙ぐましくなり
ました。アメリカのムバラク切りとか、野党がどうとか、大所高所から眺める
ことも必要でしょうが、このような一人一人の胸に宿る希望、切望、これこそが
今回のエジプト民衆の「怒りの日」をひらいたのではないでしょうか。


アルジャジーラの英語版を覗くと、言っていることはわからないながらも、デモク
ラシーという言葉が何度となく聞こえます。
わたしたちも、すでに一昨年になりますが、自民党独裁政権(エジプトとは違っ
て首相の顔こそ変りましたが)にNOをつきつけ、民主党政権を選ぼうとしたとき、
小沢元民主党代表が西松事件に嵌められました。あれから秋の選挙にかけて、いや
それ以後、いまに至るまで、何度民主主義の危機を口にしたことでしょう。


デモクラシーという制度は、それ自体は必ずしも最上の政治体制ではないとも
言われますが、何より、世界中の無数の草ぐさの一葉一葉が、何かを切実に意志を
もって訴えているということ。生きることを、食うことを、自由にものが言えることを−−。


隷属した魂から解き放たれたいと切望しています。


そんなことを、この青年の手紙はあらためて思いおこさせてくれました。
そしてまた、連想するのは、昨夜紹介したtweetsのなかのビデオで、放水でじゃぶじゃぶになった舗道を「これは俺たちの道路だ、俺たちの国だ、きれいにしなくっちゃ」と、みんなが清掃していた風景です。


希望がひらけた明るさと、まだ固まりきらない情勢への浮き立つような不安が交錯している、あの笑顔の数数を思い出します。


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2011年1月27日 木曜日
世界への手紙


みなさん、


今日、私は皆様に、エジプトで本当はいったい何が起きているか
を知らせたくて手紙を書いています。1月25日に火が付いたデモは、
自分にふさわしい人生を送る権利を求める国内の青年たちによって
組織されました。大統領を含む政府はそれを否定し、ムスリム同胞
団のような反政府組織が行った行為だと主張しています。でも、
いいですか、これはどこかの対立党派の行動ではありません。
社会全体の行動です。理由は以下の通りです。


ホスニー・ムバーラク(今年83歳)は 1981年からエジプト大統領
でした。それがいったいどのようなものか、私たちの身になって
想像してみてください。ムバーラクは私と私の友人誰もが生まれる
何年も前から大統領でした。私が小学生のときも、中学・高校のと
きも、大学生のときも、結婚したときも息子が生まれたときも、
ムバーラクはずっと大統領でした。単にムバーラクだけが「私の
人生まるごと」と同じあいだ大統領だっただけではなく、取り巻き
連中までみなそうだったのです。アフマド・ファトヒー・スルール
(今年79歳)は 1986年から大臣で、1990年からの 21年間ずっと
議会の指導者[人民議会(下院)議長]でした。サフワト・エル=シャ
リーフ[現上院議長]は 1980年代から、他の者たちもみな、私たち
が生まれる前から政府の中枢にいて、いまでもその地位にとどまっ
たままです。


国の状態はどこもかしこも、ほとんどの人にとって悪化の一途を
たどっていました。教育、報道、経済などすべてが間違った方向に
向かっており、私たちが生まれたとき以来ずっとそうでした。一般
エジプト人がどんな生活をしているかにかかわらず、政府は独占
企業がもっと利益を上げられるように「改革」してきました。それ
と同時に、1981年からずっと「非常事態宣言」が機能していて、
必要と見なされれば誰でも、国家安全保障上の理由により裁判抜き
で身柄を拘束することが認められてきたのです。さらに、選挙では
不正が行われ、そのうえで、なお真実の声を発表するどのような
表現形式を認めることさえ拒否しています。大学の学生組合の選挙
にまで不正が行われ、骨の髄まで堕落しきっています! ありとあら
ゆる分野の指導者たち、知事、大学長、工場長さえもが現役か退役
した将軍です。社会のあらゆるレベルでの腐敗はいうまでもありま
せん。失業率は、特に若者の間であまりに高く、また貧困が蔓延
して国民の半分以上が貧困ライン以下で暮らしています。
ほかにもまだ、ここに書き切れないたくさんのことがあります。


けれど、いまこそチェンジの時です! 私たちは今までずっと警察や
治安当局を恐れていました。裁判なしで私たちを拘禁し、拷問して
も殺しても問題にならないことを知っていたからです。でも、
もうたくさんだ!
私たちは待って、待って、いつかは正されると
30年間むなしく待ちました。この前の議会選挙では、かつてない
規模の不正が行われ、ムバーラクにさらに一期――あと 6年間か、
あるいはかれが死ぬまで――大統領の任期を与えるお膳立てがされ
ました。私たちは可能な限り平和的な手段をとろうとしましたが、
自由声明に署名することさえ追放の理由とされ、追及されました。
私たちに選択の余地はなかった。より良く生きること、子どもたち
のためにより良い人生を用意することは、私たちの権利です。


だまされてはいけません。人々を動かしているのはどこかの野党や
イスラーム主義者ではありません。社会全体が、なかでも特に私た
ち若者が動いているのです。私たちは平和的にデモをしていますが、
政府はごろつきや悪党を雇って抗議者のあいだに潜入させ、問題を
引き起こさせて、それをわたしたちのせいにしようとしています。

政府は容赦なく私たちを叩き、ネットやメディアを検閲し、ほんも
のの銃弾やゴム弾、催涙ガスで攻撃し、何百という抗議者を拘禁し
たり多くの人たちを殺傷しています。これは本物の戦いで、しかし
ほとんど一方的な戦いです。私たちは警官が同胞であることを知っ
ています。ただ「命令に従っているだけ」です。私たちはできる
限り、どんな場合においても警官たちを傷つけるのを避けています。



親愛なるアメリカの仲間のみなさん


あなたがたの政府は30年にわたり、ムバーラク大統領に最大の支援
を提供してきました。武器と催涙ガスで国家安全保障体制を支えて
います。米政府は、私たちの国に毎年 16億ドルに及ぶ資金を与え
ていて、それは腐敗したエジプト政府の中で主にさまざまな形の
賄賂として使われています。あなたがたの「民主的な」祖国は
イスラーム主義者を恐れるあまり、我々の政府を支援しています。
いいですか、怖いものなどないんです。イスラーム主義者について
のあなたがたの見解は事実に反し、間違いだらけですが、その話は
また後日。私たちのリーダーを選ぶことは私たち自身の権利である
という一点において、あなたがたの支援を望みます。
私たちを支援
し、上院議員や下院議員にエジプト政府を支援するのをやめるよう
に言ってください。私たちを支援し、自由はパンよりも重要である
と世界に伝えてください。私たちを支援し、30年続いている政府を
追放するのを手伝ってください。
もしもあなたの孫たちが、いまと
同じ支配者を目撃するとしたら、あなたがどのように感じるかを
ぜひ想像してください!



親愛なるヨーロッパの仲間の皆さん


あなたがたのリーダーはエジプトの状況を気にかけています。
ムバーラクが腐敗していることを知っていて、それゆえに心配して
います。わたしたちがひどい圧政の下にいることを知っていて、
その状態が続くことを望んでいます。あなたがたのリーダーは、
ローマ時代から、英国による最後の植民地支配が終わるまでずっと、
エジプトを監視していました。けれども、自分たちの国を治め、
自由がどれほど貴重であるかを自分たちの子どもに教えるのは、
私たちの権利です。リーダーと政府を選ぶことは私たちの権利です。
そして私たちを支持するのは、あなたがたの人道的責務です。
あなたの国のリーダーに対して、私たちを支援すると言ってくださ
い。エジプト大使館に行って、あなたの支持を示してください。
私たちの大義について人々に話し、そして、私たちが、自分たちの
権利、生まれてこのかたずっと抑圧されてきた自分たちの権利を
手に入れようとしているだけであることを知らせてください!



親愛なる世界の皆さんへ、


これは、あなたが本当は何者であるかを試される瞬間です。あなた
自身の真実の瞬間です。あなたの良心はまだ生きていますか。ある
いは、あなたは人間性よりも利害関係を重んじますか? あなた自身
の尊厳を証明し、私たちが人間性の回復を要求することを手伝って
くれるでしょうか。それとも、戦車が我々を轢(ひ)くのを、脇に立っ
てただ見ているだけでしょうか? それはあなたが決めることですが、
覚えておいてください。それはあなたが一生抱えていくことになる
何かであり、いつかあなたはこの件で子供たちと正面から向き合わ
なければならないかもしれません。


お声が聞こえるのを楽しみにしています。



エジプトの一青年より

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原文: "A Letter to the World" by An Egyptian Youth
URI: http://jan25egy.blogspot.com/2011/01/letter-to-world.html
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本速報は、TUPウェブサイト上の以下のURIに掲載されています。
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=906

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