自虐自滅してゆく日本・・・・田中宇氏の解説

ドイツは、1968年世代が自分の親たちがナチにどのように向き合ったか、向き合わなかったか、
徹底的に追及したというツィートを、昨日読みました。
日本で言えば安保闘争世代です。
考えてみると、いまの日本とドイツとがこんなに大きくかけ離れてしまったのは、いま
政治経済に責任をもつこの世代の違いかもしれません。


根の深い対米従属主義。
田中宇さんが、こんな重い暗い解説記事を書いています。
長い記事ですので、適当にはしょります。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
http://tanakanews.com/141002japan.htm
逆説のアベノミクス

2014年10月2日   田中 宇



 その手法は完全な不正だが、日本にとって絶対の「お上」である米国が、中央銀行による通貨の過剰発行によって債券や株を買い支える量的緩和策(QE)をやり、日本など他の先進諸国にも奨励しているのだから、QEの一環である日銀による株価操作は「良いこと」「やるべきこと」になる。株価操作を「悪」だという奴は「お上」である米国に楯突く非国民だ、ということになる。 (時代遅れな日米同盟)


 安倍政権は日銀だけでなく、国民年金基金にも株式を買う割合を増やすよう命じ、株価のテコ入れに余念がない。株価の不正なテコ入れは長期的に成功し続けるものでなく、いずれバブル崩壊的な株価急落に見舞われ、年金基金も赤字になって、今の若い人が老人になるころには年金支給額が大幅に減るだろう。しかし安倍政権にとっては、自分たちの政権が続いている間だけ株が上がり続ければ良く、その後の年金支給がどうなろうと関係ないのだろう。



 日本の場合、失業率は統計上3%台だが、新卒者の就職な困難さ、失業した中高年の再就職が困難さなどから考えて、実際の失業率はそれよりはるかに高く、10%を超えていると推測される。政権の人気取りのため「お上」である米国と似たような方法で、日本の当局が失業率を粉飾していることは十分に考えられる。



大手の輸出企業の中には、生産工程を国際化して円だけの為替の影響を受けにくくなっているところが多く、以前からの円安待望論は浅薄な間違いである。今の円安は、むしろ輸入価格の上昇を招き、貿易収支のひどい赤字化を生んでいる。このまま貿易赤字が改善しないと、今後の日本は衰退感が増していくだろう。私が見るところ、日本が円安(ドル高)を望むのは、経済的な理由からでなく、覇権国である米国より劣った存在であり続けねばならないという国際政治の理由からだ。 (日本経済を自滅にみちびく対米従属)


 国際的に強い国、(地域)覇権国になるには、通貨が強く(為替高)、財政が強く(財政黒字)、製造業など経済生産が強く(持続的成長)なければならない。通貨が強いと他国への支払いが自国通貨で行えるし、財政が強いと戦争に強いし、国債を外国に買ってもらう必要もない。通貨が強いと輸出産業が苦戦するが、それを補うだけの技術力・開発力を持つことで、為替が強くても強い製造業を持てる。今の世界でこれをやっているのはドイツだ。 (金地金不正操作めぐるドイツの復讐) (ドイツの軍事再台頭)


 米国は自国の延命のため、日欧にも自国同様のQEや財政赤字化を求め、世界中の通貨と財政を横並びに弱体化させようとして、日本は米国の要求に完全に応えたが、ドイツ(EU)は拒否している。そのためEUは、ギリシャなど周辺の弱い部分の国債市場を米国の投機筋に攻撃され、ユーロ危機によって強制的に財政や通貨を弱体化させられている。 (ユーロ危機からEU統合強化へ) (Mario Draghi pushes for ECB to accept Greek and Cypriot ‘junk’ loan bundles)


 ドイツと対照的に日本は、経済力で米国を抜きそうになった1980年代から、米国を抜くことを回避するように、通貨安、財政赤字化をずっと追求し、バブル崩壊を放置して金融や経済を自ら弱体化している。日本人はもともと倹約を美徳とする民族なのに、財政赤字の急拡大が黙認されてきた。これらは、対米従属を続けるためという国際政治上の日本の国是の維持のために行われてきたと考えられる。 (財政破綻したがる日本)



 アベノミクスは、日本を(中国に負けないよう)強くするため、国民生活を良くするための政策として打ち出されたが、実のところ、米国の弱体化に合わせて日本を弱体化する策であり、円を弱くし、日本の財政を弱くし、国民生活を悪化させている。アベノミクスは、米国の命令に従って、日本を意図的に弱くしている。中国は「敵」として置かれているが、それは日本が米国の言いつけどおり防衛費を増やすための口実的存在でしかない。中国は日本にとって本質的な敵でない。日本人は、政府や傘下のプロパガンダ機関から「中国を嫌え」と示唆されているが「中国と戦え」とは示唆されていない。戦えと示唆されたら、観光で訪日した中国人を殴りたがる人がもっと多くなるはずだ。今の日本政府が気にしているのは米国だけだ。 (Japan's factory output falls in August)



 マスコミに対する言論統制も強化されている。象徴的なのが、戦争犯罪報道の「誤報」をめぐる、官民挙げての朝日新聞たたきだ。8月の株価急落が象徴するように、今後アベノミクスの失敗が露呈する可能性がある。その前に、安倍政権に楯突きそうなマスコミ内の勢力をできるだけ無力化しておく必要がある。朝日新聞の尊大な社風を考えると「ざまあみろ」でもあるが、今の朝日たたきの本質は、朝日新聞がどうなのかという話でなく、マスコミ全体に政府批判を許さなくするための、安倍政権の延命策として見る必要がある。


 いずれ安倍首相が退陣しても、米国が今の金融救済策・覇権延命策を続けている限り、誰が日本の政権に就いても、安倍と似たようなことをやり続けるだろう。日本が対米従属をやめて自立する戦略は、09年に民主党の鳩山・小沢が試みたが官僚機構から猛反撃されて潰されて以来、再起の可能性がほとんどない。日本の方から対米自立していく道は閉ざされている。 (鳩山辞任と日本の今後) (まだ続き危険が増す日本の対米従属)


 すでに述べたように、米国は延命策をやめたらバブル大崩壊だ。米国は延命策を効かなくなるまでやり続け、最終的にバブル大崩壊するだろう。それまで何年かかるのかわからないが、その間ずっと日本は対米従属で、米国に求められるまま、自分で自分を弱める策をやり続けることになりそうだ。非常に暗い結論なので、日本のことはあまり書きたくなかったのだが、大事な話なので書くことにした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ほんとに暗い・・・・
鳩山さんは、大事なときにいつもトチ狂った。小沢の真の盟友にはなり得なかった。
国民は、といえば、マスコミの小沢悪人大合唱にみすみすと乗せられた。
民主党が政権をとって鳩山首相になったとき、日本の政治がかわるかもしれないという
かすかな風が感じられたのは事実。まあ、だから、潰されたのだけど。


孫崎享さんの話だと、昔はそれでも米国の政策をかわそうとする知恵と勇気が官僚にあったと
いう。やっぱり戦後生まれ世代・安保闘争世代が社会の中心になってからが骨無しになった
ということか。