三浦英之記者のツィート

@ビリオメディア取材中という試みなんだそうですが、朝日新聞の三浦英之記者がときどきツィート
しています。3.11の時には、一年間現場にいたそうです。
エジプト、インドネシア、いまはアフリカと、世界の現場を取材中。
そのツィート、痛ましい現場を伝えてくれています。
少し、拾ってみます。


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三浦英之@ビリオメディア取材中 @miura_hideyuki · 2013年6月29日
取材先との日程が合わず、終日自宅で電話取材。娘と孫を亡くし、その被害を隠しながら県外で働く父。目の前で母を失い、記憶に苛まれながら入退院を繰り返す女の子。私は彼らの話をどこまで記事にできるのだろう。震災直後、私はまともな記事を何一つ書けなかった。そして今また同じ状況に陥っている。
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今、新聞は「書きやすい事実」で埋め尽くされている。私もそうだった。「書きにくい事実」には時間がかかるし、相応の覚悟を必要とする。吐きながら苦しんでいる人を取材するよりも、明るい復興の話題の方が読者にも被災者にも「希望」を与えられると逃げてきた。でも実際はそうじゃない。
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取材してみるとよく分かる。悲しみなんて癒えていないし、多くの人が「前向きに生きよう」と努力しているだけだ。新聞社の末席に籍を置き、何ができるのか考える。格好つけじゃない。彼らは私にとって、なくてはならない人になっているし、私も彼らにとってそうなっていると信じてもいるから
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夕方、仮設で暮らすH夫妻からクール便で「子持ちメカブ」の瓶詰めが届く。夫妻は津波で家と母を亡くした。それでも「津波がなかったら三浦さんに会えなかった」と伺う度にご馳走を振る舞ってくれる。「ほら、どうしても食べさせたくてさ」と電話口。私はなんて幸せなのだろう。そして無力なのだろう
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別に新聞批判をしているわけではなく、メディアの将来を悲観してるわけでもない。ただ「難しい」ということを理解してほしいのです。震災直後1年間現地に駐在した私でもそう。被災した人々をさらに傷つけることはできない。そのなかでプロとして何を伝えられるのか。今日はここら辺にしておきます
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つぎは、昨年のいわき市内の状況です。
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三浦英之@ビリオメディア取材中 @miura_hideyuki · 2013年7月1日
「地元産はほとんど売れ残る」とうなだれるスーパー店員。「かつては魚も野菜もおいしかったのに、今は(産地が遠いので)味が落ちた」という主婦。「店のコーヒーはもちろん、家の炊飯にもペットボトル水を使っている」という喫茶店主。「最近、被災者の車が増えて渋滞がひどい」と嘆くタクシー運転手
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「出口の見えないトンネルみたいでね」とタクシー運転手。本当は転居したいが中学生の孫が友達と別れたくないというので動けない。成長期だから放射能が心配。近所から野菜をもらっても孫だけには食べさせない。この日は偶然、安倍首相が福島入り。「選挙前には来るんですよ」と笑いながら言った
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福島に入ってずっと感じていた違和感の理由を、NHKのローカルニュースで知る。男が多いのだ。理由は震災後、妻子を首都圏に避難させながら、仕事で福島に残った父親が多いため。そこに復興工事などで首都圏からの単身赴任者が加わる。切り裂かれる家族。悲劇はその終わりが見えないことだ
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急遽、仙台入り。21歳女性と会食。「元気そうだね」と伝えると「元気じゃないですよ」と笑った。彼女とは南三陸駐在時代に出会った。明るく、真面目で、誠実で。悩んだ末に蕎麦屋に入った。冗談を言うと笑ってくれた。私は嬉しかった。ずっと心配していたから。
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三浦英之@ビリオメディア取材中 @miura_hideyuki · 2013年7月2日
あの日、彼女は目の前で母を亡くした。近所の高齢者を助けに向かった母は波に沈む瞬間、「逃げなさい!」と彼女に命じた。彼女は濁流に飲まれながらも、柱にしがみついて耐えた。震災後、彼女は町で生活を送ろうと頑張っていた。私は彼女を応援しながら、1年後被災地を離れた。直後、彼女は入院した
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「少しキレイになったね」と言うと恥ずかしそうに笑う。今は仙台で暮らしている、半年間入院し、現在は通院、時々津波の夢を見る、町には帰りたいけど、帰れない……。「私、三浦さんにずっと会いたかったんです。約束、覚えていますか?」
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彼女との約束。それは彼女の写真を撮り続けること。母が遺そうとしたのは彼女だけの命ではない。未来に続く新しい命。私はどこまで立ち会えるだろう。 商店街の人混みの中に立ってもらう。「撮るよ!」。思わず涙が出そうに。人が生きる、その意味を、私はいつから軽視するようになったのだろう
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三浦英之@ビリオメディア取材中 @miura_hideyuki · 2013年7月10日
再び被災地から電話。今日3本目。なぜ今日に集中するのか。理由は明確。明日が月命日だから。東京にいるとそんなことも分からなくなる。「アンタ、あの時大変だったね」「一緒に泣いてくれてありがとう」。故人を想い、私にねぎらいの電話を掛けてくれる。人は、人と。明日は宮城県産の酒を飲もう
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つぎは、エジプトの話題。アラブの春と言われたあのジェスミン革命。ほんとうに感動して
youtubeを見たものだった。しかし、簡単に「春」は来ない。エジプトも苦しんでいる。
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三浦英之@ビリオメディア取材中 @miura_hideyuki · 2013年8月16日
カイロに入っている。地元TVでは今、市内の橋周辺の建物上からデモ隊を狙うスナイパーらしき男たちと、橋の上を逃げ惑う人々の姿を映し出している。そのスナイパーたちにデモ隊が銃で応戦している。今、催涙弾が発射された。人が人に実弾を撃つ。狂っている。もう600人以上が死んでいる。
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今朝、広場に集まった人々から十数枚の遺体の写真を見せられた。どれも頭や喉を撃ち抜かれて即死状態。プロ以外に考えられない、と彼らは言う。国の機関が国民を殺す。やめてくれ。遺体の写真がメールで広がり、対立は理論ではなく、感情論に。調停はきっかけを失い、混乱は出口を失っている
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今、取材拠点のカイロ総局でも銃声が聞こえた。眼下の通りを行き交うデモ隊員たちが逃げ回っている。また銃声。どうやら水平撃ちしているみたいだ。逃げて、逃げて。死なないで。
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夕暮れに染まるカイロ市内。街はこんなに美しいのに、自然はこんなにたくましいのに。なぜ、生身の人間が生身の人間に弾を撃ち込む。そこで人生が終わると知っていて、多くの家族が悲しむと知っていて。私たちは退化しているのだろうか、愚かなことを愚かだとわからないくらいに。
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三浦英之@ビリオメディア取材中 @miura_hideyuki · 2013年8月17日
エジプトの国営放送は決してスナイパーの姿を映さない。時折、建物屋上にいるスナイパーが映ると、慌ててカメラを別の方向に変えたりする。その一方で、デモ隊側の応戦射撃や投石は必要に追跡し続ける。悪いのはデモ隊側と印象づけるための情報操作。あまりな稚拙なメディア。あまり卑劣なメディア。
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今朝、デモの集結地点に指定されていた広場に取材に入った。集結していた人々は「友が殺された」「子どもが撃たれた」と暫定政権への憎しみを口にした。「だから、私は死を恐れないのだ」と。もう難しい。憎しみは憎しみしか生まない。力で覆そうとすれば、必ず力で覆される。
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今心の底から不思議なのは、目の前でこんな惨劇が繰り広げられているのに、エジプト国内の少なくない人たちがこの悲劇を「肯定的」に捕らえている事実だ。元カイロ特派員の貫洞欣寛記者が言う。「それがエジプトなんだよ」。ねじれ、屈曲し、短い言葉では解説できない悲劇の国が今目の前に広がっている
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今日痛感したこと。日本はまだまだ「良い国」だということ。多少の認識の違いがあっても、それを理解し合おうという寛容さが残っている。人が人を慈しむ。そんなささやかなものがいかに尊く、壊れやすいものなのか。自国の銃弾に逃げ惑うエジプトの人々の姿を眼下に見ながら、涙ながらに考えた。
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テレビでは撃ち抜かれた人々の遺体や傷口を延々と映し出している。今朝訪れた広場では少なくとも95人が殺害された。私がインタビューした人も今生きているかわからない。今朝話した人がもういない。それが私が今滞在しているエジプトという国です。
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双方で800人以上もの「同志」が銃弾で殺され、増幅した憎しみが街全体を覆い尽くしている。街の人へのインタビューで出てくるのは「◎◎を殺された」という言葉ばかり。「殺された」「殺せ」「殺された」「殺せ」。こんなにつらい取材は経験したことがない。
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三浦英之@ビリオメディア取材中 @miura_hideyuki · 2013年8月19日
対立の根はどこにあるのか。強制排除の前(7月15日)ですが、カイロの川上泰徳総局長が次のようなコラムを書いています。1日2ドル以下で暮らす貧困層はエジプトの4割。これが同胞団の支持者。深刻な階層間の対立。http://t.asahi.com/bqrv
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ここまで来て、ツィッターが不調です。
タイムラインが見えなくなった。
シリアの化学兵器使用で、子どもたちが殺された場面もアップしたかったのですが。残念。