2008-01-01から1年間の記事一覧

猫一首

テーブルの下なる猫に足の裏あてつつ昼の時傾きぬ 素足がこころよい五月も、ときにうすらつめたい日がある。テーブルのしたに丸くなって眠り惚けている猫の、ふくふくした腹のあたりに無遠慮に足をつっこんだり、背中のがわから足のつま先を押し入れたりしな…

(2) うたごころ

暑い。秋口に入ってようやく夏らしい今年の暑さだが、湿度がとれない。むっとした生ぬるい風が路上をたちのぼる。 子どものころの、夏の朝の気持ちよさといったらなかった。どういうわけか、いつもに似ず、誰よりも早く目が覚める。寝ていてもいいのに、起き…

(1) 奇妙なレッスン

わたしの棲んでいる窓のすぐ外には、遊歩道が通っている。蛇崩(じゃくずれ)川という、蛇の出てきそうな街川が流れていたのだそうで、それをコンクリートで覆って暗渠にし、植え込みをして、人々の散歩道にしたのである。ここに棲みついてから、もう十年を越…

あれは詩じゃない  

おそらく十六、七年ぶりにもなるのだろうか、詩人の井坂洋子さんと池袋で会って、食事をした。 待ち合わせた芸術劇場二階喫茶店の扉にあと数歩というところで、大きな白いマスクをして出てきたのが井坂さんである。なつかしいという思いが湧く。お互いの手を…

阿木津 英のブログを始めました

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